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『ファンファーレ!ふたつの音』人間の可能性と尊厳を謳う良質な人間ドラマ

© 2024 – AGAT Films & Cie – France 2 Cinéma

『ファンファーレ!ふたつの音』人間の可能性と尊厳を謳う良質な人間ドラマ

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 本作はフランスで260万人を動員したヒット作だという。本国の週末興行成績の動きを見ると(*1)、公開のタイミングが『モアナと伝説の海2』(24)と重なったため、首位こそ獲れなかったものの、公開2週目の数字の落ち方が極めて小さく、逆に劇場数を伸ばして底力を発揮。そこには観客の満足度の高さや、口コミが広く浸透している背景がうかがえる。


 それもそのはず。この映画は気持ちよく魂を震わす人間ドラマであり、それでいて劇中には常に音楽の響きが満ち満ちている。目と心で堪能し、耳も楽しい。万人に愛される良作とはまさにこのことだ。



『ファンファーレ!ふたつの音』© 2024 – AGAT Films & Cie – France 2 Cinéma


Index


二人の主人公が重ねるハーモニー



 これは二人の主人公が織りなす物語。まず描かれるのは、一人目の主人公ティボ(バンジャマン・ラヴェルネ)の暮らしぶりだ。世界的指揮者として名を馳せる彼は、クラシックのオーケストラを率いて精力的に活動している。全てが順調で輝かしく思えた。しかし転機はあまりにも突然訪れる。練習場で倒れ、己の体が白血病に冒されていることを知ったのだ。


 治療のためには骨髄ドナーを見つけることが不可欠だ。しかし適合検査の過程で衝撃の事実が判明。実はティボは家族の誰とも血のつながりがない、幼い頃に引き取られた養子だった。そしてもともと生まれた家庭には、ティボの他にも弟がいたらしく・・・。


 そう、これが二人目の主人公だ。実弟ジミー(ピエール・ロタン)は北フランスの田舎町にいた。彼の暮らしは裕福とは言い難い。多くの挫折も経験している。そんな中、突如、兄と名乗る男から適合検査を受けて欲しいと頼まれた彼。同じ母親から生まれながら、二人の育った経済環境はあまりに違う。最初は混乱し、戸惑ったものの、最終的には人の生死に関わるその依頼を承諾。これがきっかけで二人の間には交流が生まれるのだが、その中でもう一つ、明らかとなったのは、ジミーが地元のブラスバンドでトロンボーンを演奏しているという事実だった。





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