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『殺し屋のプロット』名優が挑む二度目の監督作は、派手さが抑制された燻し銀のノワール

© 2023 HIDDEN HILL LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

『殺し屋のプロット』名優が挑む二度目の監督作は、派手さが抑制された燻し銀のノワール

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記憶の消えゆく殺し屋が最後の大仕事に挑む



 そんな新作は主人公の体に生じた異変から幕を開ける。元陸軍将校で、博士号を取得して大学で教えていた経歴をも持つプロの殺し屋ジョン・ノックス(マイケル・キートン)は、最近、自分の記憶力が著しく低下していることに悩んでいた。医療検査の結果、記憶に関する病の中でも急速に症状が悪化するタイプとわかり、医師からは「もう時間がない。すぐに身の回りの準備を始めた方が良い」とアドバイス。


 しかしこの非常時に、自分が殺し屋だとバレて以来すっかり疎遠になっていた息子が返り血を浴びた状態で来訪する。聞くと、とある事情で殺人を犯してしまったとか。このままでは逮捕は免れない。そこで、この道のプロの父なら助けてくれるかもと、すがるような思いでやってきたのだがーー。



『殺し屋のプロット』© 2023 HIDDEN HILL LLC. ALL RIGHTS RESERVED.


 本作の面白いポイントは、果たしてどのラインを「客観」や「真実」として認識すべきか観客として判断しづらいことだ。ノックスの記憶があてにならないのは一目瞭然だし、その点については彼自身でさえ、己を疑ってかからないとゴールまでたどり着けないことは百も承知だ。


 その上、本作はナレーションのような言葉の説明すらなく、登場人物の心境を投影する叙情的な音楽も鳴り響かない。我々にできることは、ただじっとノックスの寡黙な行動を見つめて観察することのみ。彼の意識の流れこそがタイムリミットであり、果たして全てを忘却してしまう前に、プロット=終活を完了できるかどうかが最大の運命の分け目となる。





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