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『おくびょう鳥が歌うほうへ』シアーシャ・ローナンが女優として、作り手として、自分自身を捧げた渾身作

© 2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights

『おくびょう鳥が歌うほうへ』シアーシャ・ローナンが女優として、作り手として、自分自身を捧げた渾身作

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演技の域を超え、地球の鼓動と一体化する



 正直言って本作は、アルコール依存という深刻な問題を扱っているだけあって、主人公の混乱や葛藤がむき出しとなっていて、私たち観客にとっても胸が苦しくなるような場面が詰まっている。


 だが一方で、ロナは自分の内側に棲む問題の本質と向き合い、なんとかして前に歩み出そうとする。この浮き沈みの激しい流れに、彼女が人生で一度は背を向けた故郷への素直な思いも重なっていく。


 目の前に広がるオークニー諸島と荒波を超えた最果てに位置するパパ・ウェストレイ島の畏怖するほどの雄大な大自然。それらの鼓動や息遣いにあらがうのではなく、あるがままに身を任せる。そうやってただただ静かに地球と超然一体化していくシアーシャ・ローナンの姿には、もはや演技の域を超えた荘厳さすら感じる。



『おくびょう鳥が歌うほうへ』© 2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights


 そして、絶滅危惧種のウズラクイナの歌うほうへ耳を傾ける姿は、ロナが失いかけていた自身の存在意義を再発見しようと、内なる声にじっと耳を澄ませ続けることの投影でもあるのだろう。もしこれを経験豊富な別の巨匠が描いたなら、全く違った感触の滑らかで芸術的な感動作に仕上がったかもしれない。だが本作は、何よりもまずシアーシャ・ローナンが核心にあって初めて意味を持ち、光り輝く作品だ。


 いつか映画を撮る側に立ちたいという夢を抱き続ける彼女が、30代を迎えさらに人生を超えていこうとする今、己の瞬間最大風速を映像に焼き付けた一作。


つぐない』で演じたブライオニー、『レディバード』(17)のクリスティンなどと同様、キャリアを通じて永遠に語られていく大切な役柄となるのは間違いない。


*1)引用記事

https://www.npr.org/2024/11/06/nx-s1-5178008/saoirse-ronan-the-outrun

*2)引用記事

https://www.indiewire.com/features/interviews/saoirse-ronan-interview-the-outrun-jack-lowden-1235053890/

そのほか参考記事)

https://www.vogue.com/article/saoirse-ronan-the-outrun-interview

https://www.filminquiry.com/interview-nora-fingscheidt/



文:牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



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作品情報を見る



『おくびょう鳥が歌うほうへ』

新宿ピカデリーほか全国順次公開中

提供:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント 配給:東映ビデオ

© 2024 The Outrun Film Ltd., WeydemannBros. Film GmbH, British Broadcasting Corporation and StudioCanal Film GmbH. All Rights

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