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『旅の終わりのたからもの』悲しみを越えて世代間で交わされる”伝承”の物語

© 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS

『旅の終わりのたからもの』悲しみを越えて世代間で交わされる”伝承”の物語

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過去の歴史が今の自分に投げかけるもの



 次世代が家族の歴史を探求する例としては、近年では他にも、(ジェシー・アイゼンバーグ&キーラン・カルキン演じる)従兄弟どうしが連れ立ってポーランドに刻まれた歴史的な爪痕をめぐる『リアル・ペイン〜心の旅〜』(24)が存在感を見せた。何よりも印象的だったのは、彼らがルーツを紐解くと同時に、自分らが抱える悩みや苦しみにも光を差し込ませる点だ。


 過去から伸びる縦糸と、いまこの瞬間を貫く横糸。それらが重なり合うところに一人称の「私」がいる。『リアル・ペイン』と『旅の終わりのたからもの』(24)といった作品を鑑賞すると、過去を受け止めることが今の自分を見つめることとも連動しているかのような、かくも普遍的な気づきが私たちの体を穏やかに貫いていく。


 そして、これら2作の特徴としてさらに際立つのは、重くシリアスな印象を与えかねない物語を、おおらかなユーモアが優しく包み込んでいるところだろう。


 前者のジェシー&キーランも忘れがたいその呼吸で観客を笑わせ、泣かせてやまなかったが、それを言うなら本作のスティーヴン・フライとレナ・ダナムだって、映画やドラマをはじめ多彩な分野で人々を魅了する、言わずと知れた芸達者たちだ。



『旅の終わりのたからもの』© 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS


 特にフライのニコニコ顔と飄々とした言動は、我々を知らずのうちに笑顔にさせ、かと思えば、旅の果てのアウシュヴィッツ=ビルケナウの片隅で、彼がその大きな体に衝動的と言っていいほどの悲しみや苦しみをこみ上げさせる一瞬には、非常に胸を締め付けるものがある。


 それでも父娘はたえず辛口の言葉を叩き合い、怒ったり笑ったりしながら前に進んでいく。ユーモアは単に物語をやわらげるための手段ではない。むしろ悲劇に立ち向かうための人類の知恵であり希望であるかのようだ。


 ただし、重要なのはこの映画が投げかけられているのが今現在だということ。物語の時代背景から35年が経過し、為政者たちによって再び不安定化の一途をたどる激動の世界。名もなき人々が織りなす本作は、私たち一人一人に歴史を忘れぬために成すべきことは何か、親密なるタッチで切々と問いかけている。



文:牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



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『旅の終わりのたからもの』

kino cinéma新宿ほか全国ロードショー中

配給:キノフィルムズ

© 2024 SEVEN ELEPHANTS, KINGS&QUEENS FILMPRODUKTION, HAÏKU FILMS

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