©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
『レンタル・ファミリー』ブレンダン・フレイザーと珠玉のキャスト、そして東京の街が心の隙間を埋めていく
2026.03.05
その人にとって大切な誰かを演じること
レンタルファミリーという言葉に触れた時、私はにわかに藤子不二雄や星新一の短編、はたまた「世にも奇妙な物語」の一篇のようなSF的ニュアンスを頭に浮かべた。しかし監督のHIKARIによると、他人が”大切な人の代わり”を演じるこのサービスは、現在日本に約300社も存在する紛れもないリアルなのだとか。
同監督は、日本でこのようなビジネスが成立する背景として、現代特有の孤独や孤立、そして米国ほどにはメンタルヘルスサービスが利用されていない文化的事情などを挙げている。なるほど、心の問題に対処したい時、アメリカならば専門家のセラピーを受診することへの抵抗は少ないが(ウディ・アレンの映画で幾度もそんなシーンを目にした気がする)、日本ではむしろ私生活とは切り離された赤の他人に寄り添ってもらった方が、癒しを感じる人が少なからずいる、ということか。

『レンタル・ファミリー』©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
序盤はこのビジネスにまつわる目新しさや驚きを紐解きつつ、ブレンダン・フレイザーが存在感のある(その身長は190cmを超える)体型と、大きな瞳を輝かせながら、この異文化に飛び込んでいく様をコミカルに描写する。
興味深いのは、俳優としての成功は得られなかった彼が、レンタルファミリー業ではその才能をいかんなく発揮することだ。演技スキルが役立ったのかもしれないし、白人男性という条件がニッチな需要を満たしたのかもしれない。だが究極的に見ると、これは“人としての資質”のような気がする。母国から遠く離れ、アウトサイダーとして孤独な日々を送ってきた彼だからこそ、相手の痛みや悲しみが手に取るように分かり、その人のことを知りたい、繋がりたいと心から望まずにいられないのだろう。