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  4. 異形をアートにした神童、ロブ・ボッティンの至芸『遊星からの物体X』※注!ネタバレ含みます。
異形をアートにした神童、ロブ・ボッティンの至芸『遊星からの物体X』※注!ネタバレ含みます。

異形をアートにした神童、ロブ・ボッティンの至芸『遊星からの物体X』※注!ネタバレ含みます。


怪物が生んだ怪物 ボッティンとリック・ベイカー



 このように、22歳という若さでおそるべき偉業をなした神童ロブ・ボッティン。その師匠もまた、業界を代表する偉大なアーティストであるのをご存知だろうか。


 特殊メイク界を代表するもう一人の天才、リック・ベイカーは、ジョン・ランディスのモンスターコメディ『狼男アメリカン』(81)で、主人公が人狼に変身していくプロセスを用いてシームレスな長回しで描写。その年に創立された米アカデミー賞メイクアップ部門を受賞し、以後7度にわたる同賞の受賞を果たしている。まさにスチュワート・フリーボーン(『2001年宇宙の旅』(68)『スター・ウォーズ』(77))やディック・スミス(『ゴッドファーザー』(72)『エクソシスト』(73))といったレジェンドたちと比肩する、特殊メイクの申し子のような存在だ。


 そんなベイカーとボッティンとの出会いは、彼がボッティンのスケッチを見たことに始まる。14歳という年齢に似合わないその画力に驚いたベイカーは、彼を『溶解人間』(77)の現場へと招き入れ、スタッフとしてボッティンの腕を鍛え上げてきたのだ。そのため二人は師弟の間柄として、比較の俎上にあげられることも少なくなかった。ボッティンの『ハウリング』の後を受けてベイカーが『狼男アメリカン』を発表したときは、まるで戦いを挑んできた弟子を返り討ちにするかのような“人狼対決”として注目を浴び、この『遊星からの物体X』もまた、その内臓の腐臭に満ちたイメージがベイカーの『ヴィデオドローム』(83)と近似するということで、折に触れ比べられてきたのである。




 だがそんなベイカーも『物体X』には瞠目せざるをえなかった。特殊メイクアーティストとしての技術力は自分が与えたものだとしても、それを用いたクリーチャーそのものが独創性を極め、まさに「美しい」と称賛を得るほどにアートとして昇華されていたからだ。特殊メイクの技術だけにとどまらぬ、ボッティンのコンセプチュアルアーティストとしてのセンスをまざまざと見せつけられたベイカーはこう語っている。


「僕はロブのやり遂げたことを誇らしく思う。そのうち自分は“彼を育てた人間”ということだけが有名な男になるのかもしれない(笑)」


 ボッティンの恐ろしいまでの習得能力と応用力に対し、ベイカーは彼に一枚の絵を送ったという。それは自らが生んだ怪物を前に、頭を抱え込んでいるフランケンシュタイン博士の図だ。


 怪物を生み出した創造者の苦悩は、そのままボッティンとベイカーの関係に行き当たるのである。



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