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異形をアートにした神童、ロブ・ボッティンの至芸『遊星からの物体X』※注!ネタバレ含みます。

異形をアートにした神童、ロブ・ボッティンの至芸『遊星からの物体X』※注!ネタバレ含みます。


ボッティンの怪物性に魅了された業界人たち



 特殊メイクのテクニックと、コンセプチュアルアーティストとしての両技を併せ持つボッティン。その芸術ともいえる技巧に魅了された業界人は多い。


 ジョージ・A・ロメロ監督のオムニバスホラー『クリープショー』(82)の特殊メイクと造形を担当したトム・サヴィーニは、その中の一編「木箱」に登場するクリーチャーを創造するため、ボッティンから造形やデザインに関するアドバイスを得ている。『ゾンビ』(78)『マニアック』(80)など残酷メイクの帝王として名高いサヴィーニも、過去にモンスタースーツを手がけたことがなかったからだ。だが結果、初めてとは思えぬほどに邪悪な魅力を放つ、どう猛なヒトザル型の怪物を見事に仕上げている。


 またリドリー・スコット監督も、そんなボッティンの芸術に心酔した一人だ。彼は『レジェンド/光と闇の伝説』(85)の特殊メイクをボッティンに依頼。本作でボッティンは、ティム・カリー演じる闇の帝王ダークネスをメカニカル・ギミックではなく、細かなアプライエンス(肉付け用のピース)を皮膚に重ねて貼り付け、カリーの筋肉の動きに連動して表情などが出るように作り上げた。これは究極のファンタジーを目指したリドリーのリアリティ志向を満足させるもので、ダークネスは同作のキービジュアルを担うキャラクターとなり、ファンタジーデザインのアイコンとして引用されるほど象徴的な存在となっている。


 なにより続編となった『遊星からの物体X ファーストコンタクト』。前作と同様にフィルムで撮影し、世界観を統一しようと努めている本作だが、クリーチャー造形もボッティンの創り出したイメージを踏まえ、特殊メイクやアニマトロニクスなどを特撮のメインとし、CGは補足的に使う形で製作を手がけている。これなどはボッティンの仕事に敬意を払い、またその芸術を正しく継承したものといえるだろう。本作の製作総指揮を担当したJ・マイルズ・デイルは言う、



「ボッティンの手がけたクリーチャーは、いわば『物体X』の正門のような存在だ。正門の作りが変わってしまっては、誰もこの映画の世界に入り込めなくなる」


 特殊メイクや特殊造形は、映画製作の現場から需要が減ったもののひとつだ。ハリウッドはCGIにそのほとんどを依存するようになり、ボッティンも2000年代以降は活躍規模が縮小し、ほぼ引退に近い状態で現在にいたっている。


 だが俳優と現物のクリーチャーを同じ空間に置き、空気を共有することで生まれる臨場感は、役者がグリーンバックを前に演技するものとは大きな差がある。なにより匿名性の強いCGとは違い、そこに特殊効果を担当したものの個性が強く出るのが、80年代映画の良点であり、そして美点でもあったのだ。


『遊星からの物体X』に見られる全盛期のロブ・ボッティンの仕事は、そんな思いを何よりも強く感じさせるのである。


参考文献

日本版シネフェックス5号(バンダイ出版)

TOM SAVINI“Grande Illusions: Books I & II”AuthorMike Ink

Anne Billson“The Thing (BFI Film Classics)”British Film Institute

『遊星からの物体X ファーストコンタクト』スペシャルエディションBlu-ray(ポニーキャニオン)




文: 尾崎一男(おざき・かずお) 

映画評論家&ライター。主な執筆先は紙媒体に「フィギュア王」「チャンピオンRED」「映画秘宝」「熱風」、Webメディアに「映画.com」「ザ・シネマ」などがある。加えて劇場用パンフレットや映画ムック本、DVD&Blu-rayソフトのブックレットにも解説・論考を数多く寄稿。また“ドリー・尾崎”の名義でシネマ芸人ユニット[映画ガチンコ兄弟]を組み、TVやトークイベントにも出没。

Twitter: @dolly_ozaki



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作品情報を見る 



『遊星からの物体X <デジタル・リマスター版>』

丸の内ピカデリーほか全国順次公開中

(c)1982 UNIVERSAL CITY STUDIOS, INC. ALL RIGHTS RESERVED

公式サイト:http://thething2018.jp/


※2018年11月記事掲載時の情報です。

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