プロに徹する凄腕の殺し屋、その正体は変態だった!?
まずはストーリーをざっくりと。電光掲示を使った作品で現代アートの旗手と目されていたアン(フォスター)は、マフィアによる殺人事件を目撃したことから命を狙われる。マフィアが放った刺客は一匹狼で、やり手の殺し屋マイロ(ホッパー)。緻密な情報収集能力によりアンの居所を突き止めた彼だったが、監視を続けるうちにアンに恋してしまう。一方では、マフィアの犯罪の証拠を握りたいFBIも彼女の行方を追っていた。緊迫する状況下、ついにアンと対峙したマイロは、彼女を連れて逃げるという行動に出る。
アン殺害の依頼を受け、FBIがこの機に乗じて動いていることをマフィアから知らされたマイロは、哲学者のようにこう語るーー「情熱は、隠すのが難しい」。これはまさに、本作のテーマそのもの。冷徹な仕事人であったマイロが初めて恋愛感情を抱き、その相手が皮肉にもターゲットであるアンだった。結果、彼の情熱は隠せなくなる……という寸法。マフィアは彼を裏切者とみなし、アンともども追いかける。

『ハートに火をつけて』
マイロはアンよりもひと回り以上年上で人生経験も豊富だが、人生において恋愛には縁がなかった。そんな彼だから、アンを連れ去った後の彼のアプローチは不器用極まりない。おどおどしながらセクシーなナイトガウンを無理やり着せようとしたり、ガーターベルトを付けさせてフェティッシュな欲望を満たそうとしたり。『ブルー・ベルベット』(86)でホッパーが演じた異常犯罪者ほどではないにしても、マフィアの手下に“おまえは変態か?”と笑われたりするほどで、とにかく恋愛に関しては無知なのだ。
最初は凄腕の殺し屋に拉致されて逃げることになり怯えていたアンだったが、都会の最前線で生き、恋愛経験も豊富な彼女はマイロの中二病的な側面をほどなくして見抜く。言うことを聞かなければ殺すと脅されてはいるが、この殺し屋は恋心を語ると少々おどおどしている。逃避行の主導権はマイロが握っているが、恋愛に関してはアンの方がうわ手だ。このパワーバランスが、じつに面白い。