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『ハート・オブ・ビースト』犬と人間の究極の絆、ブラッド・ピット60代の代表作

©2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

『ハート・オブ・ビースト』犬と人間の究極の絆、ブラッド・ピット60代の代表作

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退役軍人のタフさと衰えの狭間で…



 主人公のジェームズは退役軍人。戦場体験の後遺症も含めてあちこちに疾患を抱えており、具体的に数字では言及されないものの、肉体の衰えを実感する年齢のよう。撮影時、ブラピが61歳だったことを考えると、年相応の役と言える。多くのトップスターが自身より若く感じさせる役を任されやすいが(ブラピもクリフ・ブース役などは明らかに本人より若い年代に見えた)、このジェームズ役は、元軍人らしいタフな肉体と行動力を頼りにしつつ、肉体の辛さ、弱さ、危うさによって過酷な運命を強いられることになる。ヒーローとは対極の、生身の人間の凄絶な体験に本作は集中し、その意図にブラピが精一杯の演技で応えている。


 たとえば本作には、いくつか水中のシーンが登場する。トム・クルーズのイーサン・ハントであれば、水中で数分間、息を止めたまま余裕で動き回るのだが、ジェームズは短い時間で息継ぎが必要で、そのような描写があえて挿入される。急流の勢いに為す術がない状態も、執拗なまでに表現される。デヴィッド・エアー監督は本作の12年前に、ブラピを主演に迎えて戦争アクションの『フューリー』(14)を撮っている。そこで彼が演じた陸軍の戦車長ドン・“ウォーダディー”コリアーは、敵に対して容赦なく、冷徹に作戦を進めるなど、部下の兵士から慕われつつも、人間としての弱さや脆さを垣間見せるキャラクターだった。『ハート・オブ・ビースト』のジェームズは、そのドンがリタイアした姿だと捉えることもできるだろう。



『ハート・オブ・ビースト』©2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.


 デヴィッド・エアー監督は自身が海軍に所属していた経験から、軍人や元軍人、あるいは元工作員を描くケースが多く、『ビーキーパー』(24)、『ワーキングマン』(25)と2本続いたジェイソン・ステイサム主演作では、まるで同一のキャラクターが別の世界で生きているような錯覚を与えた。『ハート・オブ・ビースト』はエアー自身の脚本ではないものの、キャスティングで彼の頭に最初に浮かんだのは『フューリー』で組んだブラピであり、軍人の“その後の人生”を同じ俳優で描きたかったことは想像に難くない。


 エアー監督作とは無関係だが、映画ファンにとっては若き日のブラピの代表作を、本作のふとした瞬間に思い出すに違いない。たとえば、ジェームズがフライフィッシングで魚を獲るシーンは『リバー・ランズ・スルー・イット』(92)、アラスカの高山での放浪は『セブン・イヤーズ・イン・チベット』(97)……といった具合に。これまで演じたさまざまな役の記憶を、年齢を経た役で甦らせる。つねに新しい作品に挑んできたブラピの成果の賜物かもしれない。





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