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『ハート・オブ・ビースト』犬と人間の究極の絆、ブラッド・ピット60代の代表作

©2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.

『ハート・オブ・ビースト』犬と人間の究極の絆、ブラッド・ピット60代の代表作

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ジャーマン・シェパードの有能さと共感力



 そして『ハート・オブ・ビースト』のもうひとりの主人公が、ジャーマン・シェパードのオーディン。ジェームズと過酷な戦地で生死ギリギリの任務を共にした軍用偵察犬。文字どおりの戦友である。ジャーマン・シェパード(一般的にシェパードと呼ばれるのは、この犬種)は軍用犬、警察犬として活躍する犬の代表格で、本作ではジェームズとアラスカの大自然の中で苦闘の旅を続けながら、彼の窮地を何度も救う。映画ならではの“ありえない”行動が見受けられつつも、シェパードの習性および能力が最大限に生かされているし、何よりオーディンを演じた犬たちが天才的な演技で説得力を与えている。


 オーディンをメインで演じたのはウーバー(Uber)という名のシェパードで、彼の3匹の息子、ライカー(Ryker)、シーカ(Seeka)、ホンドー(Hondo)が、それぞれ得意な性質を発揮できるシーンで代役を務めた。よく観ると、鼻の長さのわずかな違いに気づいたりするが、親子なのでほとんど違和感はない。デヴィッド・エアー監督は自身もジャーマン・シェパードを飼った経験があり、その性格を熟知していたことも演出に役立ったようだ。



『ハート・オブ・ビースト』©2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.


 その有能さから、シェパードは多くの映画で登場してきた。1920年代のハリウッドでシリーズ化もされた名犬リンチンチンを筆頭に、そのリンチンチンにオマージュを捧げた『名犬ウォン・トン・トン』(76)、警察犬の『K-9/友情に輝く星』(89)、旧ソ連の忠犬の『ハチとパルマの物語』(20)、近年の日本映画でも『少年と犬』(25)など数多い。『ジョン・ウィック:パラベラム』(19)ではベルジアン・シェパードという犬種がキアヌ・リーブスと共闘し、カンフーにかけて“ドッグ・フー”と命名されたりも。犬の映画は何かと愛らしさ、可愛さが強調されがちだが、シェパードの場合は精悍さ、知性、人間との相棒感が際立つ。


 ただ、過去の映画におけるシェパードに比べ、今回のオーディンは精悍さだけでなく可愛さ、悲哀も強調されているのが特徴で、ゆえに“彼”に共感させる瞬間が多数生まれる。本作には要所でジェームズとオーディンの戦地での任務が映像として挿入されるが、オーディンにとってもそれは悪夢の思い出で、彼がPTSDに陥っていることも描かれる。そんなオーディンが、窮地のジェームズを身を呈して守るシーンに、心を動かされない人はいないだろう。


 画面からはジェームズとオーディンの固い絆だけでなく、俳優ブラッド・ピットとウーバーたちの信頼感も伝わってくる。ブラピは『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』でもアメリカン・ピット・ブル・テリアとの名コンビぶりを披露しており、その流れで本作のオーディンとのやりとりを眺めると、また違った感慨に包まれるだろう。


 タイトルの『ハート・オブ・ビースト』とは「魔の領域」という意味で、ジェームズとオーディンが放り込まれた、アラスカの奥地を示している(撮影が行われたのはニュージーランドの南島)。人間を寄せつけない、未開拓の場所のことだ。直訳すれば「野獣の心」でもあり、本作ではオーディンの不屈の精神も表現する。もちろん、アラスカの脅威と自身の肉体に対し、不屈の精神で挑むのは、ジェームズも同じ。そして演じたブラッド・ピットのキャリアへの野心にも、ハート・オブ・ビーストが宿っているのだと納得した時、本作は至高の輝きを放ち、忘れ難い映画となるのであった。



文:斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。クリティックス・チョイス・アワードに投票する同協会(CCA)会員。



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『ハート・オブ・ビースト』

大ヒット上映中

配給:東和ピクチャーズ 東宝

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