2026.09.29
『ハート・オブ・ビースト』あらすじ
アラスカ上空を飛行中、不意のアクシデントにより“魔の領域(ハート・オブ・ビースト)”と呼ばれる奥地に不時着した、退役兵のジェームズと元偵察犬で義足のオーディン。立ちはだかる大自然を乗り越え「生きて還る」には、愛する存在のためにすべてを捧げる覚悟が必要だった。
Index
当たり役にこだわらないブラピの流儀
60歳を過ぎたスター俳優が、どのような作品でその輝きを保ち続けられるのか。当たり役を継続、あるいは復活させ、その人気をキープしている例もあるが、基本的には年齢にふさわしい新たな役に挑むことが現実的であり、理想的だろう。
ブラッド・ピットは、その「理想」に近いキャリアをたどっている。トム・クルーズのイーサン・ハントやマーヴェリック、キアヌ・リーブスのネオやジョン・ウィック、ジョニー・デップのジャック・スパロウ、マット・デイモンのジェイソン・ボーンのように、同年代あるいは少し下の世代のスターたちは、主演を任されて何作も演じ続けた人気シリーズが代表作になっている。ブラピの場合、『オーシャンズ』シリーズなどもあるが、あくまでオールスターキャストの一員。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19)のスタントマン、クリフ・ブース役で、続編がようやく誕生した印象(2026年公開/配信)。つまりブラピは、つねに新たな作品、新たな役で勝負しようとする野心が強い俳優。その野心によって60代での代表作に恵まれた。それが『ハート・オブ・ビースト』(26)だ。

『ハート・オブ・ビースト』©2026 Paramount Pictures. All Rights Reserved.
多くの映画は、過去の作品とは“違う何か”を目指して作られてきた。これは表現活動としても、商業活動としても当然のこと。しかしその方向性が行き過ぎると、過剰なものを入れ込みすぎる傾向も生まれる。特に近年、ネタ不足も相まってか、シンプルなストーリーに余分な味付けをして芯のテーマが失われたり、やり過ぎや散漫な味わいを残す作品も増えている。
そうした状況にあって、この『ハート・オブ・ビースト』は、余計な方向へほとんど逸れることなく、シンプルなストーリーが語られていく。それも主人公“ふたり”がほぼ全編出ずっぱりで、彼らの旅と絆がひたすら描かれるものだから、映画を観るわれわれはそこに深く没入せずにはいられない。映画とはかくも真っ直ぐに純粋な感慨を与えるものだと、改めて気付かされるのだ。
映画の作りは、むしろ大胆な新しさとは縁遠い正統派。クラシカルな佇まい。そこにブラッド・ピットの“新しい役/作品”を追求する姿勢がシンクロする。