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『フロム・ダスク・ティル・ドーン』痛快アクション、戦うヒロイン、新技術の活用。R・ロドリゲス進化の原点 ※注!ネタバレ含みます。
2019.02.05
痛快アクション、戦うヒロイン、新技術の積極活用
メキシコ系アメリカ人のロドリゲスは、ラテンの血を感じさせる外連味たっぷりのアクション演出を得意とする。監督デビュー作『エル・マリアッチ』(92)と続編『デスペラード』でその才能を世に知らしめ、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』ではフィクショナルな世界観でもそうした演出スタイルが通用することを証明してみせた。
ジュリエット・ルイスが演じた牧師の娘ケイトが、自ら武器を手にしてヴァンパイアと戦う展開も、ロドリゲスのフィルモグラフィーにおいて「戦うヒロイン」が初めて登場したという点で感慨深い。タランティーノが書いた脚本であるにせよ、(男性に庇護される存在ではなく)敵と戦って自らの運命を切り開く女性キャラクターに手応えを感じたロドリゲスは、のちの『スパイキッズ』シリーズ4作や『プラネット・テラー in グラインドハウス』(07)でも戦うヒロインを魅力的に描いてきた。
『フロム・ダスク・ティル・ドーン』(c) Photofest / Getty Images
そしてもう1つ、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』は2,000万ドルという潤沢な予算のおかげで、ロドリゲスが初めて特殊メイク、アニマトロニクス、コンピュータグラフィックスを本格導入した作品となった。CGなどの新しい技術を積極的に活用するのも本作以降のロドリゲスの大きな特徴となり、極端な例では大半の場面において背景を丸ごとCGで描画する作品もある(『スパイキッズ3-D:ゲームオーバー』(03)、『シン・シティ』シリーズ2作(05/14)、『シャークボーイ&マグマガール 3-D』(05))。
優れたアクション演出、戦うヒロイン、新技術の積極活用といった特色を並べてみると、最新作『アリータ:バトル・エンジェル』(2月22日日本公開)はそんなロドリゲス映画の集大成として位置づけることができそうだ。そしてまた、これら3つの要素は、当初『アリータ』の監督を務めるはずだったジェームズ・キャメロンの作風にも通じる。『アバター』の続編2本を優先して製作にまわったキャメロンが、後任監督としてロドリゲスを選んだのは、このように作風が似ている点も大きかっただろう。
『アリータ:バトル・エンジェル』予告
ちなみに、キャメロンがドキュメンタリー映画『ジェームズ・キャメロンのタイタニックの秘密』(03)のために開発した3D撮影技術「リアリティ・カメラ・システム」(のちにフュージョン・カメラ・システムに改称)は、ロドリゲスが『スパイキッズ3-D』と『シャークボーイ&マグマガール 3-D』で使用している。これら2作品の出来も、キャメロンがロドリゲスを選ぶ際の判断材料になったことは間違いない。