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『フロム・ダスク・ティル・ドーン』痛快アクション、戦うヒロイン、新技術の活用。R・ロドリゲス進化の原点 ※注!ネタバレ含みます。
2019.02.05
驚愕の転換に隠された意図
鑑賞した方ならご承知の通り、『フロム・ダスク・ティル・ドーン』は序盤から、強盗殺人を重ねてきた凶悪なセス(ジョージ・クルーニー)とリッチー(クエンティン・タランティーノ)のゲッコー兄弟が繰り広げる逃走劇を描いていく。セスは収監中の身だったが、リッチーの助けにより脱獄。地図を買いに立ち寄った酒屋、人質を連れ込んだモーテルで次々に騒動を起こし、娘と息子を連れ旅していた牧師フラー(ハーヴェイ・カイテル)のキャンピングカーを乗っ取って、メキシコ国境越えを目指す。
派手な銃撃戦のアクション、人質を取った車で検問を受けるサスペンスに、短気なリッチーのイカレた言動と振り回されるセスのやり取りでユーモアを添えつつも、ノワールの基調で物語は進む。しかし、映画が始まってからちょうど1時間が過ぎ、国境近くのトップレスバーで一行がまたしても騒動を巻き起こしているさなかに、突如ジャンルがヴァンパイア・ホラーへと転じるのだ!
本作の脚本は、特殊メイクアーティストのロバート・カーツマンによる原案を元に、タランティーノが担当。タランティーノが出演したロドリゲス監督の前作『デスペラード』(95)、タランティーノが呼びかけロドリゲスが全4話中の第3話を監督したオムニバス映画『フォー・ルームス』(95)に続き、2人のコラボはこれで3作目となる。
途中から突如ホラーに切り替わる構成について、DVD『フル・ティルト・ブギ/メイキング・オブ・フロム・ダスク・ティル・ドーン』の中で、ロドリゲスは「映画の前半にはホラーシーンはない。登場人物をよく知ることができ、思い入れも深まっていく。だから恐怖感を共有できる」と説明する。タランティーノもこう語っている。「スティーヴン・キングの小説の怖さと相通じるものがあるんだ。彼は人物の描写がとてもうまい。(中略)だから自然に感情移入できるんだ。そういう人物を彼は地獄へと突き落とす」「(観客は)吸血鬼が現れるなんて予想もつかない。登場人物たちと全く同じ気持ちなんだ」