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ヒッチコックの模倣以上にデ・パルマの技巧を満喫したい『殺しのドレス』

ヒッチコックの模倣以上にデ・パルマの技巧を満喫したい『殺しのドレス』


異様ともいえる「鏡」への固執



 スプリット・スクリーンの描写で使われた鏡は、『殺しのドレス』でも偏執的というレベルで使われる。冒頭のバスルームの鏡、タクシーでの情事を映すバックミラー、マイケル・ケインの机上の鏡、殺人を犯す者の足元を映す鏡……。極めつけは、殺人犯を映し出すエレベーター内の鏡だろう。さらにバスルームのガラス、殺人犯のサングラス、犯行に使われるカミソリ、ピーター役のキース・ゴードンのメガネなど、意味ありげに登場する「反射物」の多いこと! 複数の「映り込み」への強迫観念すら感じさせるのが、この『殺しのドレス』なのである。




 スプリットといえば、同じ画面に映る前方と後方の両方の人物にピントを合わせる、スピリット・フォーカスも本作では多用されているが、これは他の多くのデ・パルマ作品で、より効果的に頻出するテクニックでもある。本来なら重要な「前方」だけでなく、「後方」で進行する重要な何かを観客に意識させる、2ヶ所同時進行を意図した演出だ。


 こうして、多くの過剰なテクニックに溢れた『殺しのドレス』に、デ・パルマの分身役として関わったキース・ゴードンは、その後、映画監督の道を進むことになる。カトリック学校での圧力に立ち向かう『チョコレート・ウォー』(88)や、ロバート・ダウニー・Jr.、メル・ギブソンを起用したミュージカル・コメディ『歌う大捜査線』(03)など個性的な映画を撮り、近年は「HOMELAND/ホームランド」、「ファーゴ」といったTVシリーズの監督として活躍している。『殺しのドレス』でのデ・パルマとの経験は、その後の監督生活に大きな影響を与えたと、キース・ゴードンは後に振り返っている。



文: 斉藤博昭

1997年にフリーとなり、映画誌、劇場パンフレット、映画サイトなどさまざまな媒体に映画レビュー、インタビュー記事を寄稿。Yahoo!ニュースでコラムを随時更新中。スターチャンネルの番組「GO!シアター」では最新公開作品を紹介。 



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発売元:株式会社ニューライン

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DRESSED TO KILL (C) 1980 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.

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