※本記事は、物語の結末に触れていますので、未見の方は映画鑑賞後にお楽しみいただくことをお勧めします。
『サイン』あらすじ
妻の事故死をきっかけに牧師を辞めたグラハムは、弟のメリル、そして二人の子供達と静かに暮らしていた。ある朝、庭に巨大なミステリーサークルが出現し、不可解な出来事が次々に起こる。そしてサインは世界各地に現れるようになった。一体これは何なのかーー
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初期ブレイク3部作の締めくくりとなった野心作
M・ナイト・シャマラン監督にとって『サイン』(02)は、『シックス・センス』(99)から続く初期ブレイク2部作の”区切り”となる作品である。
それぞれ全くタイプは異なるが、シャマランは『シックス・センス』の編集作業中に『アンブレイカブル』(00)を着想し、また『アンブレイカブル』の編集を行っている最中に『サイン』を着想した。あっちからこっちへ、こっちからあっちへ。そうやって創造力の振り子を大きくスイングさせながら新作の発想を膨らませるのが、この人の独特の流儀なのかもしれない。そしてシャマランにとって何よりの苦難は、この先どれだけ頑張ったとしても、この3部作が打ち立てた高い壁を超えるのは、そう容易いことではないということだ。
『ミスター・ガラス』(19)のヒットで再び注目を集めるシャマランだが、そんな彼の作品には大きな特徴がある。まず、いまどきB級映画でも扱わないような題材をあえて選び取る。そのメインとなるストーリーにもうひとつ別のストーリーを並走、あるいは交錯させることで、構造にツイストをもたらす。さらに観客がすぐに識別し、感情移入できるような大物俳優を起用する傾向もよく見られる。つまるところ、そんなポイントをいずれも押さえた『サイン』は、最も典型的なシャマラン映画と言えるのだろう。
『ミスター・ガラス』予告
『シックス・センス』では「霊が見える」という少年を主軸に物語を紡ぎ、『アンブレイカブル』では特殊能力を持った男にスポットを当てたシャマラン。そんな彼が『サイン』で選んだのは、70年代から80年代にかけて世界的に多発した「ミステリーサークル」。1970年生まれのシャマランもそれらの超常現象を報じるニュースに少なからず胸を高鳴らせていたはず。こういった幼い頃の記憶はずっと脳裏に焼き付いて離れないものだ。これがアイディアの種となり、地中に根を張り、芽を出した。超常現象の真相はわからずじまいでも、彼は大人になった今、その謎を自分流のフィクションへと昇華させることで花開かせたわけである。