撮り方やコンセプトに影響を与えた3本の名作映画
本作は、広大な土地でコーン栽培を行う一家の物語だ。シャマランが最初に着想したのもこの「宇宙人の襲来という大事件をひとつの家族単位で描き切る」という点だったようで、だとすれば、H・G・ウェルズの「宇宙戦争」の家族バージョンをやりたかったことになる。
そして彼がこの題材を仕掛けるにあたって大いに参考にしたのが3つの名作映画だという。ひとつはヒッチコックの『鳥』(63)。2つ目はジョージ・A・ロメロ監督作『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』(68)。3つ目はドン・シーゲル監督作『ボディ・スナッチャー/恐怖の街』(56)。いずれもサスペンスやホラーの常識を覆してきた傑作ばかりである。
とりわけ『鳥』は本作の根幹を成した作品と言えるだろう。シャマランはキャストにこの映画を何度も観るようにアドバイスしていたというから、俳優たちがイメージを膨らませる上でこの作品を大いに役立てたことは想像に難くない。
『サイン』(c)Photofest / Getty Images
また、恐怖の全貌を見せずに観客の不安を煽る手法はまさにヒッチコックの常套手段だ。『サイン』の多くのシーンでは「影」や「体の一部」しか映し出されない。だがこれが、かえって我々の想像力を過敏な状態へとシフトさせ、頭の中で恐怖が勝手に膨らんでいく。ヒッチコックは誰よりもこの「観客のイマジネーション」を利用する名手だったし、シャマランもそれを踏襲し観客の心をガッチリと掌握しようとしたことがよくわかる。