1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. アンブレイカブル
  4. 『アンブレイカブル』これぞシャマラン映画!先入観を捨てて「いま観ているもの」を信じるべし! ※注!ネタバレ含みます。
『アンブレイカブル』これぞシャマラン映画!先入観を捨てて「いま観ているもの」を信じるべし! ※注!ネタバレ含みます。

(c)Photofest / Getty Images

『アンブレイカブル』これぞシャマラン映画!先入観を捨てて「いま観ているもの」を信じるべし! ※注!ネタバレ含みます。

PAGES


※本記事は物語の結末に触れているため、映画をご覧になってから読むことをお勧めします。


『アンブレイカブル』あらすじ

アメリカ、ペンシルベニア州。乗客、乗員131名が死亡するという悲惨な列車事故が起きた。かつて有望なフットボールの選手だったデヴィッドは、その列車事故の唯一の生存者だった。しかも、かすり傷一つ負わずに生き残ったのだ。「なぜ自分だけが奇跡的に助かったのか」と悩むデヴィッドのもとに、イライジャと名乗る人物から奇妙な手紙が届く……。


Index


第二の『シックス・センス』を期待された不運と誤解



 映画『アンブレイカブル』(00)は、悲惨な列車事故からたったひとり無傷で生還した男が、「自分は不死身なのか?」という疑念を解き明かそうとする物語だ。M・ナイト・シャマラン監督の長編第三作(自主製作を入れると四本目)であり、今ではシャマランの最高傑作と賞賛されることも多い。


 また『アンブレイカブル』は、『スプリット』(17)、『ミスター・ガラス』(19)と2本の続編が製作され、壮大なサーガの一角を成していることからも、シャマランのフィルモグラフィーにおける重要性がわかる。しかし公開当時は激しい毀誉褒貶に見舞われ、大きな誤解を受けた映画でもあった。そこで『アンブレイカブル』をサンプルに、シャマラン映画には付き物になっている“誤解”について検証してみたい。


『ミスター・ガラス』予告


 シャマランは『アンブレイカブル』を明確に「アメコミの映画バージョン」として認識していた。筆者とのインタビューでも、「アメコミの世界観をリアリズムを通して再構築する試みだった」と語っていた。そしてこれは作品の裏テーマでもなんでもない。映画の冒頭では、アメコミ文化についての解説が序文のように掲げられるのは、シャマランが「みなさん!今から“アメコミ映画”を始めますよ!」と宣言しているのに等しい。


 シャマランに誤算があったとすれば、『アンブレイカブル』の公開時はまだ“アメコミ映画”がハリウッドの主流ジャンルではなかったこと。そして、観客がアメコミ文化を理解しているという前提で、原作のないオリジナル企画でアメコミというジャンルの再構築に挑んだことだった。


 もちろん熱心なアメコミファンでなくとも、シャマランの意図を理解した観客は少なからずいた。しかしそれ以上に、『アンブレイカブル』という作品をつかみかねて戸惑った観客は多かった。世の中にはシャマランを大ブレイクさせた前作『シックス・センス』(19)の印象がまだ強烈に焼き付いており、配給会社も「『シックス・センス』に連なるサイコスリラー映画」として宣伝した。今となっては信じがたいことだが、当時は「アメコミ」という要素はマニアック過ぎて、興業面ではデメリットになると思われていたのである。


 実際、過去にアメコミを実写化した『スーパーマン』(78)や『バットマン』(89)は確かに大ヒットはしたが、すでに興業の不振を理由に一旦シリーズを終えていた。マーベルコミックの映画化『X-メン』は『アンブレイカブル』の全米公開に先立つ2000年夏に公開されてヒットしており、サム・ライミ監督による『スパイダーマン』(02)の大成功にも繋がっていくのだが、まだ「アメコミ映画=ヒット」という流れができる以前だっただけに、宣伝チームが『シックス・センス』のインパクトの方がはるかに利用できると踏んだのも当然の判断だったとも言える。 


『シックス・センス』予告


 つまり『アンブレイカブル』は、世に送り出された時から“誤解”を余儀なくされた作品だったのだ。さらに『シックス・センス』のラストのドンデン返しが大評判を呼んだことも、誤解に拍車をかけた。実際、ドンデン返し(時には逆にドンデン返さないというドンデン返し)はシャマランのお家芸になっており、『アンブレイカブル』にも驚きの展開が待ち受けている。しかし、そのせいで『シックス・センス』の「親子の断絶からの和解」というドラマ性が軽視されてしまったように、『アンブレイカブル』のアメコミ要素も、ドンデン返しのためのネタのように思われてしまったのである。


 結果的に『アンブレイカブル』は、7,500万ドルの製作費に対して全世界で2億4,800万ドルを稼ぎ出しており、決して興業的に失敗したわけではない。とはいえ前作『シックス・センス』が売れすぎた。同作は『アンブレイカブル』の半額に近い4,000万ドルの製作費で、全米だけで『アンブレイカブル』の世界興収より多い額を稼ぎ出し、世界興収は6億7,200万ドルを超えていた。配給会社にとって『アンブレイカブル』は、『シックス・センス』比で期待以下の成果しか上げられなかった失敗作と見なされてしまったのだ。


 シャマランは後に「意に沿わない宣伝をされた作品が成功したことはない」と苦言を呈している。結局『アンブレイカブル』の真価が認められたのはDVDがリリースされてからで、2011年にはタイム誌が「スーパーヒーロー映画トップテン」の4位に選出している。時と共に作品の評価が大きく変わった証拠と言えよう。



PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
counter
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. アンブレイカブル
  4. 『アンブレイカブル』これぞシャマラン映画!先入観を捨てて「いま観ているもの」を信じるべし! ※注!ネタバレ含みます。