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『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』虐げられた者たちに“呼吸”を与える、逞しき「100%自己中映画」
2020.03.20
『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』あらすじ
悪のカリスマ=ジョーカーと別れ、すべての束縛から放たれたハーレイ・クイン。モラルのない天真爛漫な暴れぶりが街中の悪党たちの恨みを買うなか、謎のダイヤを盗んだ少女を守るため、悪を牛耳る残忍でサイコな敵ブラックマスクとの全面対決へ!悪VS悪のカオスな戦いを前に、ハーレイはとってきおきの切り札、クセ者だらけの最凶チームを新結成。ヴィランたちの世界で、予測不能のクレイジー・バトルが始まる!
Index
「女性の自立」を組み込んだ社会的テーマ
一見すれば、神をも恐れぬ不敵な映画。娯楽作というには、あまりに傲慢で自己中心的。しかし、その奥に漂うのは、「女性の自立」を訴える社会的なエッセンス。隷属からの脱却。自分らしく罪を犯す。実にDCらしい、アウトローな挑戦作だ。
DCコミックの悪役がチームを組んだ『スーサイド・スクワッド』(16)の中で、間違いなく「大成功」と呼べるのは、マーゴット・ロビーが演じたハーレイ・クインだろう。奇抜なヘアカラーにメイク、ポップな服装。狂気すら感じるハイテンションなキャラクターで、「ジョーカーの恋人」という最強属性まで備えた彼女は、爆発的な人気を呼び起こした。
『スーサイド・スクワッド』予告
『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』(20)は、そんなハーレイの単独作だ。マーゴットがプロデューサーも兼任し、『スーサイド・スクワッド』の“その後”の物語が描かれる。世界興行収入は2億ドル間近で、2020年のランキング4位(3月17日現在)。やや社会的なテーマをはらんでいるにせよ、批評家・観客共に評価も上々だ。
本作のあらすじを簡単に説明すると、まずトピックとなるのが「ハーレイ・クインがジョーカーに捨てられた」事件から始まる物語であるということ。犯罪王であるジョーカー(ジャレッド・レト)の庇護がなくなったことで、ハーレイはゴッサム・シティ中のならず者から命を狙われることになる。そして、スリの少女や壮絶な宿命を背負った暗殺者、囚われの歌姫、男社会で不遇を極める刑事といった女性たちと協力していく――というストーリーだ。ジョーカーの威を借る状態だったハーレイが、1人のヴィラン(敵役)として地位を確立していく過程が、大きな見どころといえよう。
上記からわかるとおり、本作には「女性の自立」がかなり意識的に組み込まれている。マーゴットが「複数の女性キャラクターを入れたい」と打診したこともそうだし、ストーリーの流れ自体が完全に、かつわかりやすくその主張を打ち出しているのだ。
『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』予告
今回のジョーカーはハーレイを無惨に捨てた悪漢で、1人の女性を洗脳して人生を狂わせた罪人のニュアンスが強い。『スーサイド・スクワッド』ではある種のラブシーンとして描かれていた「絆」が、本作では「隷属」「暴力」へと姿を変えているのだ。これは、かなり強烈な意趣返しといえるだろう(現に、ハーレイは劇中でジョーカーとの関係が始まった工場を爆破する)。
ハーレイ・クインの「愛する人のために身も心も捧げる」要素をポジティブにとらえたのが『スーサイド・スクワッド』なら、その奥にある恐ろしさ・危うさを抉り出すのが『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』といえよう。ポップなテンションで彩られてはいるが、物語の裏に流れる感情はなかなかにシリアスだ。