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DC映画の新地平を切り拓く、モニュメンタルな作品
愉快なコメディと、迫力のアクション、そして家族の絆。アメコミ映画の新星『シャザム!』(19)は、シリーズに新風を吹き込むべく、DC映画の過去の作風をあえて逸脱し、大きく舵を切った。クリスチャン・ベール主演の“ダークナイト3部作”以降、DC映画はダークなテイストを一貫して描出し、そのスタイルは画然たる流儀を確立している。
スーパーマンのリブートとなる『マン・オブ・スティール』(13)と、同作を起点に続く“DCエクステンデッド・ユニバース(DCEU)”では、先述のダークナイト路線を俊英ザック・スナイダーが享受し、フィルム・ノワール的な犯罪アクションとして、ダークなヴィジュアル面を昇華させてきた。もとより、DCコミックスの社名の由来となる“ディテクティブ・コミックス”がミステリ系の探偵コミックス誌であることを踏まえると、その実写映画がダーク路線に落ち着くことは自然なことだったのだろう。
さて、こうした一連のDC映画は『ジャスティス・リーグ』(17)以降、大きく変貌する。DC映画の特色だった良い意味での“暗さ”は徐々に薄れ、『アクアマン』(18)では迫力の海洋アクションを前面に押し出した。本作『シャザム!』では、痛快なコメディを映し出し、悪ノリ全開のギャグとアクションで畳みかけてくる。さらに本作では、家族の絆という普遍的な要素を取り入れ、観客の共感を得ることに成功しているのだ。まったく新しいヴィヴィッドな作品として、本作はシリーズの大地に新機軸を打ち立てている。
DC映画に新しい息吹をもたらした『シャザム!』だが、これまでの持ち味となるダーク路線を完全に払拭したワケではない。ライバルのマーベル映画では基本、昼間が主戦場となるが、対するDC映画では夜間の戦いがよく描写される。思い返せば『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(16)や『ワンダーウーマン』(17)のシメとなる最終戦は、すべて夜明け前の薄暗いロケーションが設定されている。それは本作も例外ではない。そういう意味で本作は、伝統的なダーク路線と、コミカルなセンスを萌芽させたクレバーな快作として評価されるべきだろう。