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『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』虐げられた者たちに“呼吸”を与える、逞しき「100%自己中映画」

(C) 2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C) DC Comics.

『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』虐げられた者たちに“呼吸”を与える、逞しき「100%自己中映画」

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マーゴット・ロビーが製作に入った“意味”



 たとえば『ミッドサマー』(19)が依存症気質の女性の“心の解放”の物語をホラー&スリラー調で示したように、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』はアメコミ映画の文脈で“メンヘラからの脱却”を描いている。『アベンジャーズ/エンドゲーム』(19)にも、女性ヒーローが勢ぞろいする意図的なシーンが見られたが、社会的なメッセージをホラーやアメコミなど大衆化したジャンルに包んで出すアプローチは、極めて現代的だ。


 ここで興味深いのは、マーゴットが製作を手掛けた作品には「男に人生を狂わされた女性たち」が共通して登場するという点だ。ライバルを襲撃した疑いをかけられたオリンピック選手を描いた実話『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』(17)、謎めいた殺し屋を演じたミステリー『アニー・イン・ザ・ターミナル』(18)は、共に「男性へのリベンジ」が重要な核となっている。


『アイ,トーニャ 史上最大のスキャンダル』予告


 今後の製作・出演作もロビン・フッドの恋人である乙女マリアンを演じる『Marian(原題)』、実写版『バービー(仮題)』と、何かしら「女性の自立」が絡んできそうな作品たちが続く。余談だが、『バービー』の監督は『レディ・バード』(17)のグレタ・ガーウィグ、脚本は『マリッジ・ストーリー』(19)のノア・バームバックとガーウィッグの共同と、非常に豪華。今後の話題作となるだろう。


 さらに解釈を拡げれば、国家のために母となる夢を捨てたエリザベス1世を演じた『ふたりの女王 メアリーとエリザベス』(18)、悲劇の女優シャロン・テートに扮した『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19)、セクハラ事件を題材にした『スキャンダル』(19)など、マーゴットの出演作は一貫して「女性と社会」を考えさせるものばかりだ。今回のハーレイは例外――と考えるには見過ごせない符合である。


『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』予告


 実際、『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』の冒頭はハーレイの生い立ちがアニメーションで語られるのだが、そこでも父親が1つの元凶として描かれる。『ジョーカー』(19)が社会によって悪へと歩まされていったように、本作のハーレイは出会ってきた人々の影響を強く受けていく。この辺りからも、マーゴットが『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒 BIRDS OF PREY』をプロデュースしたことで、自身の“色”をしっかりと打ち出したことが見て取れる。


 そしてまた、30年近い歴史を持つキャラクターであっても、現代の“価値観”に合わせて変化・成長していかなくてはならないのだ、というような意志も感じられる。つまり、本作の“裏ミッション”は、既存のハーレイ・クイン像の否定なのではないか。ハーレイからジョーカーをはぎ取って路頭に迷わせ、そこから立ち上がらせようとするストーリーからは、『スーサイド・スクワッド』からの流れを尊重しつつも、“今のヒロイン”へと歩ませていこうとする意図を感じずにはいられない。



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