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『アンブレイカブル』これぞシャマラン映画!先入観を捨てて「いま観ているもの」を信じるべし! ※注!ネタバレ含みます。

(c)Photofest / Getty Images

『アンブレイカブル』これぞシャマラン映画!先入観を捨てて「いま観ているもの」を信じるべし! ※注!ネタバレ含みます。

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アメコミ的ヒーローの誕生を描いた“エピソード0”



 シャマラン本人がDVDの特典映像や多くのインタビューで語っているところによると、『アンブレイカブル』の最初の着想は、アメコミヒーローの“誕生編”にあたる部分だけを抽出し、一本の映画にすることだった。ヒーローが悪役と派手なアクションを繰り広げるクライマックスよりも、主人公が「自分はヒーローである」という事実を知り受け入れるまでの段階に興味をそそられたのだという。

 

 アメコミの諸要素を映画に置き換える試みは、作品の随所で見ることができる。例えばブルース・ウィリスが演じた主人公の名前はデヴィッド・ダンだが、アメコミのキャラクターには、頭文字に同じ子音が並ぶ頭韻体のパターンが非常に多い(必ずしも同じアルファベットとは限らない)。クラーク・ケント(スーパーマン)、ピーター・パーカー(スパイダーマン)、ブルース・バナー(ハルク)、ウェイド・ウィルソン(デッドプール)などはそのほんの一部だ。シャマランは『スプリット』のヒロイン、ケイシー・クックにも同じ方式を適用している。


 ヴィジュアル面では、画面の中に別の画面が入り込むフレーム内フレームの構図が頻発する。シャマランは映画全体を一冊のアメコミとして構成することにこだわっており、フレーム内フレームはアメコミのコマ割りの機能も果たしている。



『アンブレイカブル』(c)Photofest / Getty Images


 またデヴィッド・ダンを緑、イライジャことミスター・ガラスを紫と色分けした象徴性もアメコミ的表現に準じている。紫は「バットマン」の人気ヴィラン、ジョーカーのテーマカラーだが、演者であるサミュエル・L・ジャクソンの証言によると、ジャクソンが好きな色だからという理由で紫色になったらしい(シャマランは『ミスター・ガラス』公開時に、ツイッターで紫の理由を「忠誠心や偉大な力を現している」と説明しているが)。


 ちなみに『スプリット』、『ミスター・ガラス』に登場するケビンこと“ビースト”のテーマカラーは黄色。『アンブレイカブル』でイライジャの母が少年時代のイライジャにプレゼントするアメコミの表紙には、緑色のコスチュームを着たヒーローが“ジャガーロ”という黄色い半人半獣の怪物と闘っているイラストが描かれている。本三部作の理念に準じるなら、このイラストは後にデヴィッドとケビンが相まみえる未来を予言していたと考えて良さそうだ。


『スプリット』予告


 少し話がズレるが、アメコミ以外にシャマランが思い浮かべていたのが「トワイライト・ゾーン」だった(シャマラン映画のほとんどは「トワイライト・ゾーン」的だと言えるが、それはさておき)。「トワイライト・ゾーン」はSFやホラー色が強い摩訶不思議なエピソードが一話完結で描かれるテレビシリーズで、シャマランは30分間の1エピソードを2時間かけて描くような映画を目指していた。


 シャマランは律儀なことに、「トワイライト・ゾーン」からインスパイアされていることも、これまた映画の冒頭でハッキリと宣言している。映画の冒頭、イライジャが産まれるシーンで最初に名前を呼ばれるのは“マシソン”という医師だ。このネーミングは、スピルバーグの『激突!』(71)の原作者で、「トワイライト・ゾーン」の脚本を数多く手がけた作家リチャード・マシスンへのオマージュなのである。



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