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『アンブレイカブル』これぞシャマラン映画!先入観を捨てて「いま観ているもの」を信じるべし! ※注!ネタバレ含みます。

『アンブレイカブル』これぞシャマラン映画!先入観を捨てて「いま観ているもの」を信じるべし! ※注!ネタバレ含みます。

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批評家に理解されなかったシャマラン最大の武器



 『アンブレイカブル』が見舞われた不幸のひとつに、批評家の不理解があった。筆者は一度だけシャマランを取材したことがあるのだが、ゴールデン・グローブ賞関連のカンファレンスに参加した時に体験したあるエピソードを話してくれた。


 『アンブレイカブル』には、主人公デヴィッドが不死身のヒーローだと信じる息子のジョセフが、真相を確かめようと拳銃を持ち出してデヴィッドに向ける場面がある。デヴィッドと妻のオードリーは必死になってジョセフをたしなめる。「撃っちゃダメだ! もし撃ったら、父さん出て行くぞ!」というセリフも可笑しければ、ジョセフが「一発だけ……」と食い下がるのも可笑しい名シーンだ。




 しかしカンファレンスに出席していた批評家たちは、このシーンを取り上げて「観客が笑っていましたが、スリラーなのに笑われるなんて失敗だったのでは?」と言ったという。シャマランにしてみれば狙い通りに客席を沸かせただけなのに、「スリラーとドンデン返しの監督」というレッテルを貼られたせいで、愉快なシーンを愉快であるという理由で貶められてしまったのだ。


 ちなみにこのシーンの元ネタになったのは、1950年代に放送されたテレビ版「スーパーマン」に主演して人気を博したジョージ・リーヴスが語ったといわれる思い出話。リーヴスを本物のスーパーマンだと信じたファンの子供が、不死身であることを確かめようと拳銃を向けた。リーヴスは「確かに自分は不死身だ、でも、自分を撃ったら銃弾が跳ね返って、周りの人が危険だから撃つのはやめなさい」と諭したという。


 この話は半ば都市伝説めいていて、実際に起きたことなのか定かではないが、リーヴスの伝記映画『ハリウッドランド』(06)でも挿話として取り入れられている。シャマランも「銃弾が跳ね返って危ない」というくだりまで使っているのだから、リーヴスのことを念頭に置いていたことは間違いない。



 シャマランがこのシーンにユーモアをもたらそうとしたことは、オードリー役のロビン・ライトの衣装にも現われている。ライトが着ているのはデヴィッドのテーマカラーに合わせた緑色の袖なしシャツなのだが、よく見ると「八坂の塔」として知られる京都の観光名所「法観寺」がプリントされているのだ。


 マジメに分析すると、当該のシーンでは、オードリーは不仲だった夫デヴィッドとの関係を修復する決意をしたばかりなので、もしかすると、かつて夫婦で日本を旅行したときに買った土産物のシャツを引っ張り出してきたのかも知れない。しかし、そんな裏設定があろうとなかろうと、小学生の子供が拳銃を持ち出し、夫が生命の危険にさらされている緊急時に、他のシーンではシックな装いのオードリーがお寺のプリントシャツを着ている絵面の奇妙さは、わざと以外にはありえない。


 シャマランはこういう類いの油断のならないユーモアの持ち主で、『アンブレイカブル』に限らず、いつ突拍子もない小ネタがブッ込んでくるのか予想がつかない。このスリリングな笑いのセンスこそが、シャマランの作品を唯一無二の「シャマラン映画」たらしめている主要因だと言える。



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