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ペルソナと分身。『複製された男』に至る創作の歴史を紐解く

©2013 RHOMBUS MEDIA(ENEMY)INC./ROXBURY PICTURES S.L./9232-2437 QUEBEC INC./MECANISMO FILMS,S.L./ROXBURY ENEMY S.L. ALL RIGHTS RESERVED. 

ペルソナと分身。『複製された男』に至る創作の歴史を紐解く

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『複製された男』あらすじ

大学の歴史講師アダム(ジェイク・ギレンホール)は、ある日同僚から1本のビデオを薦められる。応じるままに鑑賞した彼は、その映画の中に自分と瓜二つの端役の俳優を発見する。あまりのことに驚きを通り越し恐怖を感じたアダムは翌日から取り憑かれたようにその俳優を探し始める。アンソニーという名前を突き止め、気づかれないよう遠くから彼を監視するうちに、どうしても会って話がしたくなり遂にアンソニーに接触する。その週末二人は対面し、顔、声、体格に加え生年月日も同じ、更には後天的に出来た傷までもが同じ位置にあることを知る。どちらが“オリジナル”でどちらが“ダブル”なのか―、なぜ自分と全く同じ人間が存在するのか―。後戻りできない極限状況に陥った彼らは、それぞれの恋人と妻を巻き込みながら、想像を絶する運命をたどっていくのだった……。


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「ペルソナ」とユングの概念



 ほとんどすべての映画がそうであるように、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『複製された男』(2014年)も過去の創作物から影響を受けている。前回の記事では考えられる4通りの解釈を示したが、本稿ではそれを引き継いで、「ペルソナ」や「分身」を扱った映画を中心にその歴史を紐解いていこう。


 重要な作品の1つとしてイングマール・ベルイマン監督の『仮面/ペルソナ』を取り上げるが、その前に、「ペルソナ」という用語に関する予備知識を簡単に示しておきたい。


 時代は紀元前1世紀のギリシャにまでさかのぼる。当時の演劇では、大きな野外劇場でも観客が登場人物を識別できるよう、さかんに仮面が用いられた。この仮面をギリシャ語で「ペルソナ(persona)」と呼んだ。役者が舞台に出てくるたびに別のキャラクターを演じる場合は、そのつど別の仮面をかぶって登場したという(ここに多重人格との類似がみられる点も興味深い)。



『複製された男』©2013 RHOMBUS MEDIA(ENEMY)INC./ROXBURY PICTURES S.L./9232-2437 QUEBEC INC./MECANISMO FILMS,S.L./ROXBURY ENEMY S.L. ALL RIGHTS RESERVED. 


 スイスの心理学者カール・グスタフ・ユングは20世紀半ば、こうした古代ギリシャ演劇における仮面の役割を踏まえ、「人間の本来的な内面に対する外的側面」を表す概念として「ペルソナ」という言葉を用いた。



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