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『ゴッドファーザーPARTII』莫大な権力を手にしたマイケル・コルレオーネと重なる、フランシス・フォード・コッポラ
2019.03.20
前作のモチーフを繰り返すことで、変貌と崩壊を描く。
本作が、過去と現在という二つの時間軸を行き来する構成であることはすでに述べた。別の時代の物語を並列させて、若き日のヴィトーがコルレオーネ一家の勃興と反映を、現在のマイケルが混乱と崩壊を象徴するというコッポラの狙いは、みごとな効果を上げている。
冒頭ではヴィトーの少年時代が描かれるが、続くマイケルのパートは盛大なパーティーから始まる。これは『ゴッドファーザー』の冒頭が、マイケルの妹コニーの結婚パーティーだったことに呼応している。パーティーの裏舞台で陰謀が進行し、やがて暴力と殺戮に繋がっていくのも共通しているが、違うのは、コニーの結婚パーティーが父ヴィトーの栄華の集大成だったのに対し、マイケルのパーティー(実際には息子アントニーの聖餐式のパーティー)がファミリーの変貌と離散の予兆に満ちていることだろう。
家族という意味でもマフィア組織という意味でも、シチリア由来の家父長的な絆で結ばれてきたコルレオーネ・ファミリーだが、主賓として挨拶に立った上院議員は息子アントニーの名前を「アンソニー・ヴァイトー・コルレオーネ」と発音する。ミドルネームの「ヴァイトー」は「ヴィトー」の英語的な読み方だが、ファミリーの関係者であれば誰もが先代のドンにちなんで「ヴィトー」呼ぶことは知っているはずなのに、議員は意識的か無意識か、とにかくマイケルとマフィアを軽んじているのだ。
『ゴッドファーザーPARTII』Copyright (C) 1974 by Paramount Pictures and The Coppola Company. All Rights Reserved. Restoration Copyright (C) 2007 by Paramount Pictures Corporation. All Rights Reserved. TM, (R) & Copyright (C) 2014 by Paramount Pictures. All Rights Reserved.
ファミリーのビジネスは拡張の一途だが、一方では政界の大物から侮られ、“名誉”を重んじたファミリーの伝統は踏みにじられている。父の代からの顔役マフィアであるフランクがパーティーバンドにタランテラ(イタリアの民謡)を演奏させようとしても、イタリアの曲を知らないバンドはマザーグースの童謡でごまかしてしまう。『ゴッドファーザー』のパーティーシーンをなぞっているようで、明らかに描いているものが真逆になっているのだ。
『PARTII』は随所随所で前作のシーンをトレースしつつ、シーンの意味合いを負の方向にズラしていくことで、マイケルとファミリーの変貌を浮かび上がらせる。コッポラのこのコンセプトは、表現的には双子のような作品なのに、印象がまったく異なる大きな要因となっている。当時は続編映画に『PARTII』『2』などと付ける習慣がなく、二番煎じに見えるという理由でスタジオから反対されたらしいが、コッポラが『ゴッドファーザーPARTII』で押し通したのも、前作ありきの対になる構造が前提だったと考えると納得がいく。