2019.05.06
長大絵巻の集大成にして、180分越えという挑戦
先の項での記録は必然的とさえ思えてしまうが、よくよく考えるとその必然性はものすごい条件の中で成立したことになる。というのも、この超大作が全21作品の最終章であって、なおかつ上映時間が3時間を越える、決して低くないハードルのもとで成り立っているからだ。にもかかわらず、映画は世界各国における様々な記録を続けざまに更新している。まったくありえない話だが、それが事実なのだ。大仰な物言いではあるが、この不可能と思われた大業を見事に成し遂げたマーベルは、良い意味で狂気に満ちている。
普通であればシリーズが続けば続くほどに新規層の獲得は難しいものとなる。しかしマーベル・スタジオの場合はこの命題を定期的にクリアしてきたといえる。この完結編の前に『キャプテン・マーベル』(19)を配置したことこそ、この度の信じがたい成績に繋がったのではないかと思う。1990年代が舞台の『キャプテン・マーベル』は、新規ファンの開拓に成功し、来る『アベンジャーズ/エンドゲーム』の布石として機能しているのだ。
『キャプテン・マーベル』の時代背景は、『アイアンマン』のラストでトニー・スタークが自身の正体を明かした場面から遡ること10年ほど前の話だし、キャプテン・アメリカはまだ解凍されず、北極圏のどこかで眠っているころだ。無論、地球にはアベンジャーズのような抑止力はなく、まして地球外の脅威なんて誰も信じていないのだ。本作を鑑賞するうえで予備知識はあまり必要ないと言えるだろうし、そういう意味で、新規ファンのために間口を広げたストーリーは非常にクレバーだ。『アベンジャーズ/エンドゲーム』の前にこの作品をあえて配置したマーベル・スタジオ社長ケヴィン・ファイギの辣腕ぶりには脱帽してしまう。
『アベンジャーズ/エンドゲーム』(c)Marvel Studios 2019
かくして、およそ10年にわたって築き上げた壮大なタイムラインの細かな伏線を内包し、シリーズのすべての続編となる本作『アベンジャーズ/エンドゲーム』は、『キャプテン・マーベル』での新規ファン開拓という必要な下準備を経て、映画史上に残る圧倒的な記録を達成するに至ったのだろう。『キャプテン・マーベル』なくして、この成績は生まれなかったハズだ。