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アメリカン・ニューシネマ『卒業』、マイク・ニコルズの演出テクニックを垣間見る

(c) Getty Images

アメリカン・ニューシネマ『卒業』、マイク・ニコルズの演出テクニックを垣間見る

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ベン役がロバート・レッドフォードではなかったわけ



 マイク・ニコルズが多くの候補者たちの中からダスティン・ホフマンをベン役に選んだのは、独特のシャイな雰囲気が役にぴったりだったからだ。予想通り、撮影中、ホフマンはまるでベンそのものだったとニコルズは後述している。


 ベン役の候補者は他に、ロバート・デュバル、ロバート・ワグナー、ジョージ・ハミルトン、アルバート・フィニー、ジーン・ワイルダー、スティーヴ・マックイーン、アンソニー・パーキンス、ジャック・ニコルソン、ウォーレン・ベイティ等、当時すでにある程度知名度があった俳優たちが名を連ねていた。その中の1人がロバート・レッドフォードだ。


 オーディションの際、役について完璧に理解していると自信ありげに語るレッドフォードに対して、ニコルズは鏡の前に彼を立たせてこう言ったという。「君が女性を誘惑するのに手こずるような男に見えるかい?」実に的確な不合格通知である。



4Kデジタル修復版のメリット



 因みに、今回の4Kデジタル修復版では、画像はきめ細かく、音量はボリュームアップ。リアルタイマーは青春時代へと回帰し、若い映画ファンはブルジョワのパーティシーン、アイビー・ファッション等、60年代カルチャーを新鮮な気持ちで堪能できるはずだ。また、女優のアイメイクが当時の流行を取り入れ、世代に関係なく濃いめで、同じような分厚い付け睫毛を着けている点にも注目して欲しい。そのせいで、バンクロフトとロスがまるで本物の親子のようにそっくりに見える。これは、新たな発見かもしれない。



文 : 清藤秀人(きよとう ひでと)

アパレル業界から映画ライターに転身。映画com、ぴあ、J.COMマガジン、Tokyo Walker、Yahoo!ニュース個人"清藤秀人のシネマジム"等に定期的にレビューを執筆。著書にファッションの知識を生かした「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社刊)等。現在、BS10 スターチャンネルの映画情報番組「映画をもっと。」で解説を担当。 



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『卒業 4Kデジタル修復版』

2019年6月7日(金)より、角川シネマ有楽町ほか全国公開

※2019年5月記事掲載時の情報です。


(c) Getty Images

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