(c)Viacom 18 Motion Pictures (c)Bhansali Productions
超大作『パドマーワト 女神の誕生』にみるインド映画の“事件” 映画の力でインドの観客を圧倒
2020.04.06
インド映画の、また別な極北
「荒唐無稽で突然歌って踊りだすインド映画」そんな常套句でインド映画を揶揄する人を未だに見かける。
しかし、そもそも映画なんていうものは虚構に他ならない。語られる物語だって創作だし、よしんば史実や実際の事件を元にしていたとしても、それは必ず“ウソ”の映像化である。
だったら、できる限り壮大で派手で荒唐無稽なウソのほうが楽しい。魔法が無く、メガネの子供がひたすら伯父さんに虐げられ続けるハリーポッターを想像すれば解りやすいだろう。
歌だって、あると無いとでは、あった方が絶対に良い。日本で良く知られたインド映画。たとえば『ムトゥ 踊るマハラジャ』(95)しかり。『バーフバリ』しかり。壮大で、派手で、楽しく荒唐無稽なウソと楽しい歌で構成された、見事な娯楽作品である。
『パドマーワト 女神の誕生』(c)Viacom 18 Motion Pictures (c)Bhansali Productions
一方、『パドマーワト 女神の誕生』にはムトゥやバーフバリのような“ウソ”は無い。思わず笑ってしまうような愉快な歌も無い。その代わりに、現実にはありえないほど美しく上品な情景の“ウソ”と、真摯で切実な想いを込めた歌がある。
方向性は違っているが、同じように振り切ったウソと歌で観客を魅了するのである。それが、どれほどのものかと言えば、映画館ではスグに騒ぎ踊りだすインド人さえうっとりと息を飲ませるほど、なのだ。
そんな素晴らしい作品が『パドマーワト 女神の誕生』なのである。
文:侍功夫
本業デザイナー、兼業映画ライター。日本でのインド映画高揚に尽力中。
『パドマーワト 女神の誕生』
2019年6月7日(金)全国順次ロードショー
配給:SPACEBOX
公式サイト: http://padmaavat.jp/
(c)Viacom 18 Motion Pictures (c)Bhansali Productions
※2019年6月記事掲載時の情報です。