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ジョン・シングルトン監督の半自伝的映画『ボーイズ'ン・ザ・フッド』のメッセージとは

(c)Photofest / Getty Images

ジョン・シングルトン監督の半自伝的映画『ボーイズ'ン・ザ・フッド』のメッセージとは

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同じ人種同士が殺し合う世界



 ダウボーイが加わるギャングのモデルとなっているのが、青い色をイメージカラーとする、実在するカラーギャングの「クリップス」である。彼らは赤い色を身につけた「ブラッズ」とは敵対関係にあり、両ギャングの間では日々抗争が起こっていた。本作の冒頭、「アメリカで黒人男性が殺される率は21人に1人。手を下すのは多くが同じ黒人男性である」というメッセージが表示されるように、本作の中心に置かれる社会問題は、このような黒人同士の抗争である。


 トレの父親であるフューリアスは、この問題を深刻なものと捉えており、トレとリッキーを教育するためにコンプトン(サウス・セントラルの南側に位置する犯罪率の高い街)にまで連れていく。よそ者として攻撃されるのではと怯えている二人に、「いまは90年代だ。同じ黒人同士恐れ合ってどうする」と諭す。そして彼は、自分の子供たちや集まってきたコンプトンの住民にスピーチを始める。


 「この国にヤクを持ち込んでるのは黒人じゃない、でもヤクを売るのも買うのも黒人だ。なぜ黒人地区に銃器店が多い?黒人地区に酒屋が多いのと同じ理由だ。銃や酒で黒人が同士討ちし合えばいいと思ってるからだ。ビバリーヒルズにそんなものがあるか?もっとよく考えろ、ブラザー」



『ボーイズ'ン・ザ・フッド』(c)Photofest / Getty Images


 70年代から盛んになったのが、アメリカの各都市で黒人ゲットーと呼ばれる、黒人居住地区が用意されたことである。ロサンゼルスにおいても、コンプトンやワッツなど、黒人地区に黒人を押し込めるという事実上の隔離を行ったのは、当時の権力者たちの施策である。


 同じ人種同士でいがみ合うという悲劇は、安い賃金で働かされている労働者が、自分よりちょっと待遇の良い労働者を憎むようになる構図に似ている。労働者たちが本当に怒りを向けるべきは、不当な報酬で働かせている雇用者であるはずなのに、貧困に苦しむ仲間同士で軋轢が発生してしまうのである。それで助かるのは、いったい誰なのか。傷つくのは誰なのか。



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