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ジョン・シングルトン監督の半自伝的映画『ボーイズ'ン・ザ・フッド』のメッセージとは

ジョン・シングルトン監督の半自伝的映画『ボーイズ'ン・ザ・フッド』のメッセージとは


世界を救う希望の言葉



 本作が公開された翌年、映画の舞台となったサウス・セントラルを中心に、大事件が起こることになる。世にいう「ロサンゼルス暴動」である。


 その引き金となったのは、アフリカ系とアジア系の間に起こった殺害事件だった。本作でダウボーイを演じた、ラッパーでもあるアイス・キューブもまた、それを受けて人種間の対立を煽るようなパフォーマンスをしてしまったほど、この事件は黒人社会に衝撃を与えた。黒人やヒスパニック系を中心とした破壊活動によって、1万人以上の逮捕者が出たロサンゼルス暴動は、マイノリティである人種間同士の軋轢を描いたスパイク・リー監督の『ドゥ・ザ・ライト・シング』を、奇しくも予言的な映画へと変えてしまったともいえる。そして、やはり本作『ボーイズ'ン・ザ・フッド』が懸念した問題の、ある種の再現にもなっているのである。



 本来は、アジア系もアフリカ系も、アメリカ社会のなかではマイノリティにあたり、差別を受けてきた存在である。鬱屈した気持ちを、暴力として同じマイノリティに向けたところで、事態が改善するどころか、さらに人種間の断絶を生み出し、社会のなかでアフリカ系に対する偏見が深まることになるのではないのか。


 本作の主人公の一人であるトレは、シングルトン監督自身がモデルとなっている。そしてやはり少年時代にサウス・セントラルで彼の父親と暮らす経験を経て、大学に通うことになるのである。ローレンス・フィッシュバーン演じるフューリアスが教育したように、監督もまた、父親の指導があって未来を切り拓くことができた。つまり、シングルトン監督自身が、ゲットーのサバイバーだったのだ。だからこそ本作は、シングルトン監督のような経験をしてきた者にしか撮れない、圧倒的なリアリティと、学ぶべき真理が映し出されている。


 「もっとよく考えろ、ブラザー」


 不当な社会への不満や怒りを、どこに向けるのか、そして、どのような方法でぶつけるのか。本作のフューリアスがアフリカン・アメリカンに向けた、この言葉は、もっと広い範囲にも通用するメッセージだ。何か行動を起こすとき、怒りに我を忘れそうになったとき、多くの人々がこのフレーズを頭のなかに置いていたら、世界はもっと良いものになるはずである。



文: 小野寺系

映画仙人を目指し、さすらいながらWEBメディアや雑誌などで執筆する映画評論家。いろいろな角度から、映画の“深い”内容を分かりやすく伝えていきます。

Twitter: @kmovie



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(c)Photofest / Getty Images

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