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『ミッドナイトクロス』タランティーノも絶賛する、ブライアン・デ・パルマの偉大で重要な傑作

(c)Photofest / Getty Images

『ミッドナイトクロス』タランティーノも絶賛する、ブライアン・デ・パルマの偉大で重要な傑作

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批判されがちなデ・パルマの表現



 そして『ミッドナイトクロス』には、デ・パルマの強迫観念もまた表れている。覗き見──ジャックの録音による盗み聞きは覗きのヴァリエーションであり、かつてデ・パルマ少年は父親が浮気する現場を盗み撮りしていたことを『デ・パルマ』で打ち明けている──と、女性を恐怖に陥れるサディスティックな男性像である。故に、彼の映画は女性蔑視だとの批判もしばしば受けてきた。


 「女性の扱いが酷いとか暴力描写が過激と言われても私にはそれが正しいやり方なんだ」「私は物事に対する自分の見方を表現するし、その表現は映画のなかで繰り返し登場する」と彼は弁明する。あるいは彼は、政治、ギャング、戦争と扱ってきたジャンル自体が男性優位主義社会だからだと説明する。確かにそこで危険な状況に置かれる女性を取り上げることでサスペンスが醸成されるとともに、愛する女性を救うことができない無力な男の後悔によって甘美なメロドラマが一層稼働されると言えるのかもしれない。


 「自分のせいで騒動に巻き込んだ結果として男は最後、女性を死なせてしまう。そして彼女の悲鳴を卑俗なホラー映画に使う。そのアイデアが浮かんだのは、サウンドトラックをカットして効果音を入れるときだ。(中略)映画に使用された悲鳴を聞き、彼の苦悩は軽減する。このシーンのトラボルタを見るたびに心を動かされる」とデ・パルマは述懐する。


 「It’s a good scream」──美しい絶叫を発見すると同時に、デ・パルマのサディスティックな世界でジャックは懺悔の煉獄に身を置かれる。タランティーノはそのあまりに悲痛な終幕を「映画史上最も心を打つクロージング・ショットのひとつだ」と断言している。



【参考】

『ミッドナイトクロス』劇場プログラム

デ・パーマ・カット』ローラン・ブーズロウ著 今野雄二訳(キネマ旬報社)

ブライアン・デ・パルマ──World is yours』三留まゆみ監修(洋泉社)

映画『デ・パルマ

https://www.rogerebert.com/interviews/john-travolta-blow-out-in-chicago

https://www.rogerebert.com/interviews/de-palma-interview



文:常川拓也

「i-D Japan」「キネマ旬報」「Nobody」などでインタビューや作品評を執筆。はみ出し者映画を特集する上映イベント「サム・フリークス」にもコラムを寄稿。共著に『ネットフリックス大解剖』(DU BOOKS)。



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