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単なる“覗き”映画などではない。ヒッチコック『裏窓』が奏でる多様な愛のハーモニー

単なる“覗き”映画などではない。ヒッチコック『裏窓』が奏でる多様な愛のハーモニー

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スタジオに出現した、前代未聞の巨大セット



 パラマウント社の第18ステージにお目見えした巨大セットは、さながら一つの町のようだったという。グリニッジ・ビレッジの街並みを参考に、50人もの作業員が6週間かけて作り上げたこの伝説的なアパートメントと中庭。「高さ」を確保するために床をぶち破り、地下スペースをも加えて建造された建物は、31もの部屋を擁し、調度品を備えたそれぞれの部屋では肌色のイヤフォンを装着したキャストが監督の指示に合わせて、いっせいに日々の営みを演じた。


 また、ここには雨降りシーンのための排水設備もあり、さらに指示一つで照明が「朝、昼、夕方、夜」という4段階にすぐさま切り替えられる機能もあった。このかつてない壮観なセットを一目見ようと、撮影所には国内外からの見学者が絶えなかったとも言われる。


 かくも準備段階から話題を振りまき続けたヒッチコックの『裏窓』(54)は、足を骨折して身動きが取れない主人公(ジェームズ・スチュアート)が、手持ち無沙汰な時間を埋めるべく、中庭に面した裏窓から他人の生活を覗き見するという映画である。




 主人公の定位置からは住人たちの暮らしや人生が手に取るようにわかる————そう言葉にするのはたやすいが、実際の映像として具現化するのには大変な労力が伴う。なにしろ、「覗く側」が主体とはいえ、「覗かれる側」の生活も窓越しにくっきりと浮かび上がるものでなければならない。


 それはある意味、客席とステージの関係性にも似ている。この劇場的空間をいかに成立させるべきか。緻密な計算と試行錯誤の末、「覗き/覗かれ/その様子を映画館の観客がさらに覗き見る」という状態を可能にしたのが、先の巨大セットだったのだ。



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