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ホラー映画になるはずだった!?『脳内ニューヨーク』が描く奇想天外すぎる世界

ホラー映画になるはずだった!?『脳内ニューヨーク』が描く奇想天外すぎる世界

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最初はホラー映画を作るはずだった!?



 実は当初、本作はスパイク・ジョーンズの監督作として企画されたものだった。そこでジョーンズからカウフマンへなされたオファー内容は「ホラー映画の脚本を頼みたい」というものだったとか。


 もちろん、彼らにとっての“ホラー”の定義が一般的な尺度に収まるはずもなく、彼らは「ある晩に見た不穏な夢」について語り始めたことをきっかけに、このプロジェクトは「夢での体験をそのまま映画で表現できればいいよね」(*1)という不可思議な方向へと舵を切り始める。


 「夢」がもたらす構造、不可解さ、不条理さ。これらを意識して執筆を始めたカウフマンは、「自分にとって本当に怖いと思えること」をあれこれ想起しながらイメージを膨らませていくことに。そうして出来上がったのは、殺人鬼に追いかけられたり、悪霊に取り憑かれたりといった劇的ホラーよりも100倍も1,000倍も怖い、極めてリアルな人生に根ざしたなものとなった。




 つまり、老い、病気、才能の枯渇、家族の不和、不安、身近な者の死、自分はこの先もなんら重要なことを成し遂げることなく死にゆくのではないかという恐怖・・・。どれも40代、50代を超えたあたりから深刻に胸をきしませ始める深刻なホラー要素のオンパレードだ。


(*1)劇場公開時のプレス資料より引用



なぜ自ら監督に乗り出したのか?



 人生におけるリアルな恐怖を、まるで夢の中に迷い込んだかのような虚と実の曖昧な境界線のもとで描いていく。ただしこの物語は、最初から周到に結末を用意した計算づくのものではなかった。カウフマン自身もどんな展開になるのかわからないまま、その先に待ち受ける運命を主人公と共に歩みながら探し求める、そんな日々が続いていった。


 そうやって筆をふるうこと2年。カウフマンらしい様々な要素をちりばめた人間絵巻が一本の脚本として出来上がった。


 だが、ここで思わぬ問題が生じることに。本作を監督するはずだったスパイク・ジョーンズはそのころ『かいじゅうたちのいるところ』(09)の製作に取り掛かっており、すぐには動けない状況だったのだ。




 彼のスケジュールが空くまで待っていれば、優に5年はかかるだろう。それでは遅すぎる。できれば本作で描かれた自身のリアルな不安や恐怖を克服する意味でも、50歳を迎える前に完成を迎えたい。そのためには今ここで、己の足で動き始めるしかない。カウフマンはジョーンズに許しをもらい、これを自身の監督デビュー作とする決意を下したのである。



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