2017.09.14
宇宙や悠久の時と対峙して14歳は何を知るのか?
アキン監督は、子どもが捉えたものをあまり説明せずにありのまま見せ、観客を少年らの旅に誘うように本作を描いた。
印象的なのは、約1000年前に要塞として作られた古城リゲンシュタインの高台で、3人が50年後の約束を交わし、中世の兵士の名前の隣にそれぞれのイニシャルを彫るシーン。1000年の時の流れと比べれば、50年は短い。それでも彼らにとっては永遠に近い時間。ゆったりとした子どもの時間は、やがてスピードを増し、そしていつしか生命を失う時を迎え、過去の時間の中に刻み込まれていく。でも今の彼らには1000年前の戦いも、いまそこにある危機も同じくらい遠い。
初めて野宿した少年たちが、空を見上げて『スターシップ・トゥルーパーズ』について語る場面も同様だ。昆虫型宇宙人と地球人の攻防を描くあのSF。「あのでかい脳みそが出てくる映画だろ?」などと笑い合いながら、彼らはふと宇宙の向こうに自分たちと同じように天を見上げる2匹の虫の存在を感じ、自分たちのちっぽけさに気づく。このシーンは、原作を読んだ監督が一番興味を覚えた部分なのだという。
それぞれの問題を抱えながらも突き進む子どもたちを、ありのまま爽快に描いてみせたアキン監督。誰もが経験するであろう、自分の存在の大きさを認識するこのシーンもさりげなく作品に織り込まれている。ひたむきに動く子どもたちに重ねる思いは人それぞれだが、この作品に多くの人が共感し感動するのは、状況こそ違えど誰しもが通ってきた道だからに他ならない。この青春映画の傑作に触れ、爽やかな夏を思い起こしてみるのもまた一興かもしれない。
文: 関口裕子
9月16日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほか全国順次ロードショー!
公式サイト: http://www.bitters.co.jp/50nengo/
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※2017年9月記事掲載時の情報です。