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『デス・プルーフ in グラインドハウス』デカいアメ車と女性とスタントマンへの、最高のタランティーノ式オマージュ

(c)Photofest / Getty Images

『デス・プルーフ in グラインドハウス』デカいアメ車と女性とスタントマンへの、最高のタランティーノ式オマージュ

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『バニシング・ポイント』等の爆走ヴィンテージカーたち



 確かに『デス・プルーフ in グラインドハウス』におけるラス・メイヤー印はあくまで一因であり(とはいえ荒野で強気の女性たちがパワフルに大暴れする終盤などモロに似ているんだけど)、具体的に熱烈なオマージュを捧げているのは往年のカーアクション映画だ。劇中では主人公の殺人鬼スタントマン・マイク(カート・ラッセル)がブロンド美女のパム(ローズ・マッゴーワン)にこんな台詞を言う。


 「『バニシング・ポイント』(1971年/監督:リチャード・C・サラフィアン)や『ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー』(1974年/監督:ジョン・ハフ)、『爆走トラック‘76』(1975年/監督:ジョナサン・カプラン)……当時の映画は本物の車を本物の人間が運転していたんだ」。


 これら偉大なる先行例に倣って、『デス・プルーフ in グラインドハウス』のカーアクションも余計なVFXの盛り付けなど一切なし。車にカメラを直接設置し、ヴィンテージカーを120kmから160kmのスピードで突っ走らせ、ドライバーの凄腕テクで実際に横転やクラッシュをぶちかます。エンジン音を唸らせて豪快に暴れ回るデカいアメ車は実に官能的だ。



『デス・プルーフ in グラインドハウス』(c)Photofest / Getty Images


 前半でスタントマン・マイクが乗るのは1970年型のシボレー・ノヴァSSの凶暴な改造車(“耐死仕様”=デス・プルーフ)。ボンネットにドクロマークを禍々しくペイントしてあるのが中二病チックで痺れる。それが大破したあとは、1969年型のダッジ・チャージャーに乗り換える。ちなみに『ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー』では、主演のピーター・フォンダがシボレー・インパラとダッジ・チャージャーを自分で運転している。


 そして後半、マイクと壮絶なカーチェイスを繰り広げるのが、『バニシング・ポイント』に登場したモデルと同じ白の1970年型ダッジ・チャレンジャーだ。この車の“キャスティング”に関して、タランティーノは興奮してこう言う。「まるであの映画の車がゲスト出演しているみたいだよ!」


 テネシー州の田舎レバノンを舞台に、このダッジ・チャレンジャーにはタフな女性チームが乗り込む。『バニシング・ポイント』は虚無に憑かれた主人公コワルスキー(バリー・ニューマン)がただひたすらアクセルを踏み続けるアメリカン・ニューシネマの名作のひとつだが、あの男臭い孤独と破滅が、シスターフッド(女性たちの連帯)の陽気さに乗り換えられている光景は、いま(2019年)の眼で観ても実に現代的なアップデートだと思う。



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