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『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』本来の居場所=映画館に帰ってきたテレビドラマ

(c)Rockwell Eyes Inc.

『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』本来の居場所=映画館に帰ってきたテレビドラマ

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テレビドラマ初の日本映画監督協会新人賞受賞の快挙



 アニメーション『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(17年)の原作にもなった岩井俊二監督によるオリジナル版は、1993年に『if もしも』(フジテレビ系)という1話完結の1時間ドラマシリーズ枠で放送された『ifもしも #15 打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』である。後に劇場公開されて、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(以下『打ち上げ花火』)の題となった。現在ではテレビドラマがSNSで話題を呼ぶと目に止まりやすいが、この作品は特異な道を歩むことになった。


 1993年8月26日午後8時から放送された本作は、静かに話題を広げていった。偶然、番組を見た人々の口コミがじわじわと噂を呼び、岩井俊二は翌年、1993年度の第34回日本映画監督協会新人賞を本作で受賞した。1960年に第1回を大島渚が『青春残酷物語』で受賞以来、テレビドラマの受賞は初。その後も現在に至るまで受賞作は劇映画、ドキュメンタリーなどがあるものの、全て映画だけに、『打ち上げ花火』の受賞はいっそう際立っている。


 この年、日本映画監督協会新人賞の選考委員長だったのは、『青春の殺人者』(76年)、『太陽を盗んだ男』(79年)の長谷川和彦。当時の日本映画の若手監督が陥りがちな自身の内面に向かいすぎて描く世界が小さくなる中で、『打ち上げ花火』は、しっかりした技術によって作られた映像を含めての評価だった。当時、監督協会の理事長だった大島渚は、「テレビ作品のながい題名にも違和感を持った」(『戦後50年 映画100年』大島渚・著/風媒社)と、審査結果に思ったというが、贈呈式で上映された本作を観て、「『ifもしも~』はシリーズの一本としてつくられたとはまったく思えない、みずみずしい感性で貫かれた個性的な作品」(同書)と評した。もちろん、選考にあたった監督たちも大島渚も、岩井俊二がこの直後から映画製作を始め、2年後には完全に軸足を映画に移すことは知るよしもない。ただ、『打ち上げ花火』という作品が、見慣れたテレビドラマとは全く違う映画のような作品であることに感嘆したのだ。



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