2017.09.22
突発的な劇場公開
こうした事情から、まるで映画みたいと言われた〈伝説のテレビドラマ〉は放送から2年を経て突発的に劇場公開されることになり、本当の映画になった。元々ビデオで撮影されたものに手を加えて放送段階からフィルムライクな映像にしてあったこともあり、劇場公開にあたってフィルムに変換しても、違和感ない仕上がりとなった。結果、テレビでは異質に見えた作品が、ようやく本来の居場所=映画館に帰ってきたと思えるほど、従来のテレビ作品の特別上映とは一線を画すものとなった。
公開にあたっては再編集を行い、『ifもしも』のタイトルならびに番組の前後に入るタモリの解説も削除し、放送時間の関係でカットされたシーンを復元した2nd Editionになっている。その後、発売されたVHS、レーザーディスクはこのバージョンが収録され、DVD、ブルーレイは更に追加シーンのある3rd Editionとなっている。
作品は生き物である。公開時に評価されなかった作品が、何十年の時を経て傑作と言われたり、その逆もある。『打ち上げ花火』は、テレビドラマに足が生えて、帰るべき場所へと向かうために、映画監督協会新人賞を受賞したり、『undo』の限定上映で実績を作り、おまけに『PiCNiC』の上映延期という不幸を逆手に取って、映画館にたどり着いたのではないかとすら思えてくる。こうした強い生命力を持つ作品が、今もまだ魅力が衰えないのは当然なのかも知れない。一度だけの放送で、再放送もソフト化もされないのが当たり前の状況で作られた作品が、アニメでリメイクされるまでに生き永らえたのだ。
文: モルモット吉田
1978年生。映画評論家。別名義に吉田伊知郎。『映画秘宝』『キネマ旬報』『映画芸術』『シナリオ』等に執筆。著書に『映画評論・入門!』(洋泉社)、共著に『映画監督、北野武。』(フィルムアート社)ほか
「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」実写豪華版Blu-ray BOX
監督:岩井俊二
主演:山崎裕太・奥菜恵
品番:NNB-0001
発売・販売元:ノーマンズ・ノーズ
価格¥7,400(税別)
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