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『ファンダンゴ』エルトン・ジョン、スピルバーグ、そしてチェッカーズとの意外な関係とは
幻のアンブリン第1回製作作品
「Saturday Night’s Alright(For Fighting)」は『チャーリーズ・エンジェル フルスロットル』(03)や『わたしが美しくなった100の秘密』(99)、『エンティティー/霊体』(82)などの劇中にも使用されているが、『ファンダンゴ』では映画冒頭のタイトルバックに使われている点で特別だという印象がある。「土曜の夜はファンダンゴ」のレコードジャケットを確認すると、そこには <フジテレビ+ニッポン放送提供 日本ヘラルド映画社配給「ファンダンゴ」主題歌> と記載されていて、日本公開に当たって“主題歌”扱いされていることからも特別な度合いが窺える。
ところが、1985年1月にアメリカ本国で限定公開された『ファンダンゴ』の興行収入は、トータルで僅か9万1,666ドル。撮影したフィルム代にも満たないほどの厳しい結果だった。当時、配給のワーナー・ブラザースは、1985年公開予定のラインナップで、『ファンダンゴ』のタイトルを目玉作品のひとつとして挙げていた。それもそのはず、この時点では製作総指揮の名前にスティーヴン・スピルバーグの名前が記されていたからだ。確かに、本作のエンドロール終盤には、BMXのカゴにE.T.を乗せたエリオット少年のシルエットをデザインにした、「AMBLIN ENTERTAINMENT」のロゴが登場する。実は「アンブリン・エンターテインメント」の第1回製作作品として作られた映画が『ファンダンゴ』だったのだ。
『ファンダンゴ』(c) 2019 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
「アンブリン」はスティーヴン・スピルバーグが1968年に監督した短編映画『Amblin’』のタイトルが由来になっている。この『Amblin’』と『ファンダンゴ』には、荒野の風景といったロケーションや、極端なクロースアップなど、スピルバーグが製作総指揮を引き受けたことを納得させるような近似した映像を確認できる。そもそも、『ファンダンゴ』を監督したケヴィン・レイノルズには、学生時代に製作した『Proof』(80)という作品がある。これは『ファンダンゴ』のスカイダイビング場面だけを取り出したような短編映画なのだが、この映画自体に『Amblin’』の映像と同じ雰囲気があるのだ。そんな経緯から、スピルバーグが『Proof』を観て、『ファンダンゴ』をアンブリン・エンターテインメントの第1回作品に決めたと言われていることも頷ける。
『ファンダンゴ』予告
しかし現在、『ファンダンゴ』のクレジットを探しても、スティーヴン・スピルバーグの名前は見つからない。そして、「アンブリン・エンターテインメントの第1回作品である」というオフィシャルな記述を見つけることも難しい状態にある(※AMBLINの公式HPからは作品名そのものが除外されている)。アメリカでの興行不振によって、ワーナー・ブラザースによる1985年の日本劇場公開は見送られ、ラインナップからは姿を消した。ところが、1986年になって <フジテレビ+ニッポン放送提供 日本ヘラルド映画社配給> という形で、3月8日に日本でも劇場公開されることになるのである。