2019.08.08
『シークレット・スーパースター』とは誰のことか?
「部族に取り憑いた悪霊を払うために犬と結婚をさせられた18歳の少女。」これは、2014年に起こったインド発のニュースである。もちろんこのニュースはインドですら非常に極端な例である。
しかし、世界には「最低でも3人は子供を産め」「女性は子供を産む機械」などの放言を、よりによって国会議員が発信した国もある。同じ国では、受験において男子を優遇する採点をし、あまつさえ発覚したあとも全く無根拠な言い訳をしたそうだ。また、その国では就職活動中の女性のなんと50%がセクハラ被害に遭っているといった統計が出ているらしい。
また、レイプや痴漢被害に遭うと警察官に「その服装で誘ったのではないか?」「そんな服装で、こんな時間にウロウロしていれば被害に遭うのは当然だ。」など、被害者を責めまでする国もあるらしい。
『シークレット・スーパースター』(c) AAMIR KHAN PRODUCTIONS PRIVATE LIMITED 2017
『シークレット・スーパースター』が描くのは、封建的な父親の家に生まれた少女に限られた物語では無い。封建的な人間のせいで、思いを隠さざるをえなくなった、世界中にいる多くの女性の物語である。そして、そんな社会にしたくないと考える、男女を問わない全世界の人々に向けられたメッセージでもある。
映画『シークレット・スーパースター』は「隠された涙」を流させず、歓喜の涙を流させようとする。いや、しかし。涙を隠したい人々にとっては試練の作品でもある。
文: 侍功夫
本業デザイナー、兼業映画ライター。日本でのインド映画高揚に尽力中。
『シークレット・スーパースター』
2019年8月9日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー
公式サイト: http://secret-superstar.com/
(c) AAMIR KHAN PRODUCTIONS PRIVATE LIMITED 2017
※2019年8月記事掲載時の情報です。