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『トッツィー』はコメディじゃないと言った、ダスティン・ホフマンの涙の理由

『トッツィー』はコメディじゃないと言った、ダスティン・ホフマンの涙の理由


ドロシーを囲む女優たちとビル・マーレイ



 『トッツィー』でホフマンを支えた人々にも言及しておこう。マイケルのエージェント、ジョージを演じるのは、監督のシドニー・ポラックである。「今のままだと誰も君を雇わない」と断言した直後、女装して目の前に現れるマイケルに度肝を抜かれるジョージの表情は、素人とは到底思えないほどリアルだ。否、映画監督であるからこそ、女装してまで演技者であろうとする俳優の性に、心底驚嘆できたのではないだろうか。本作でのポラックはまさにオスカー級の名演だ。


 また、女優陣も見逃せない。ジェシカ・ラングの、前作『女優フランシス』(82)とは正反対の抑制された演技は、ドロシー╱マイケルを同時に魅了する女性像を見事に具現化。ラングはこれで、本命視されたアカデミー助演女優賞を見事獲得した。他にも、マイケルに振られてしまうサンディを演じた、テリー・ガーの卓越したコメディエンヌぶり(やはりオスカー候補入り)。裸に無頓着な新人女優エイプリル役で映画デビューを果たしたジーナ・デイヴィス。ラングも含めて、彼女たちはハリウッド映画では欠かせない逸材となった。そういう意味でも、『トッツィー』は映画業界の女優発見、もしくはフェミニズム化に協力した作品と言えるのではないだろうか。




 そして、もう1人、『トッツィー』には重要な俳優が出演している。ビル・マーレイだ。マーレイはあえて、オープニング・クレジットから名前を削除させることで、それ以前の出演作『ミートボール』(79)や『ボールズ・ボールズ』(80)で定着しかけたおバカなイメージを払拭。マイケルの同居人で脚本家の卵ジェフに扮して、女装騒動の顛末をクールに見つめている。物静かで皮肉屋で、何よりもよく見るとイケメン。『トッツィー』は俳優ビル・マーレイのその後の路線に道筋を付けた作品でもあるのだ。




文 : 清藤秀人(きよとう ひでと)

アパレル業界から映画ライターに転身。映画com、ぴあ、J.COMマガジン、Tokyo Walker、Yahoo!ニュース個人"清藤秀人のシネマジム"等に定期的にレビューを執筆。著書にファッションの知識を生かした「オードリーに学ぶおしゃれ練習帳」(近代映画社刊)等。現在、BS10 スターチャンネルの映画情報番組「映画をもっと。」で解説を担当。 



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『トッツィー』

Blu-ray:¥2,381+税 発売中

発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

(c)1982 COLUMBIA PICTURES INDUSTRIES, INC. ALL RIGHTS RESERVED.

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