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『トッツィー』はコメディじゃないと言った、ダスティン・ホフマンの涙の理由

『トッツィー』はコメディじゃないと言った、ダスティン・ホフマンの涙の理由

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 2012年にアメリカン・フィルム・インスティチュート (AFI)のインタビューに応えたダスティン・ホフマンは、インタビューの最後で感極まって声を詰まらせる。「僕はドロシー・マイケルズを演じるまでは、女性の本当の気持ち、心の奥底にあるものを理解できてなかったと思う。だから、僕にそれを気づかせてくれた『トッツィー』(82)は、あまりにも意味深くて、決してコメディなんかじゃないんだ」


 『トッツィー』では、40歳にもなっても売れる兆しが見えない、完璧主義者の俳優マイケル・ドーシーが、ある日突然、女優ドロシー・マイケルズに変身してTVドラマのレギュラーを奪取。あれよあれよという間にお茶の間の人気者になって行く。


 監督としても名高いバリー・レヴィンソンやエレイン・メイ等が関わり、友人でもある脚本家のマレー・シスガル(ラリー・ゲルバート共著)がようやく完成させた本作の脚本。それをホフマンが受け取った時から、凄まじい役作りが始まった。


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女性的な物腰と話し方は完璧に習得したが…



 女性的な外見と物腰を勉強するために、ブロードウェーで公演中のミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール」に何度も足を運ぶ。また、『クレイマー、クレイマー』(79)で共演したメリル・ストリープの前で、『欲望という名の電車』(51)のヒロイン、ブランチ・デュボワの台詞を読み合わせてもらう。そもそも、ホフマンがドロシー役に興味を持ったきっかけは、父親でありながら母親の役目を演じた『クレイマー、クレイマー』に端を発していた。




 さらにホフマンは、言葉に少しだけ南部訛りを加えると、自分の喋りのピッチにぴたりとはまり、より女性らしく聞こえることも発見する。


 さて、後は実践あるのみだ。試しに愛娘の保護者懇談会に、ドロシーおばさんとして出席してみたところ、出席した親たちも先生たちも、誰1人それがダスティン・ホフマンだと気づかなかった。同じ格好をして、友人のジョン・ヴォイトやメリル・ストリープ、キャサリン・ロスの前に現れてみたが、やはり誰も気づかなかった。しめしめ、これでうまく行くぞ。



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