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『追憶』ラブロマンスかポリティカルか、シドニー・ポラックと脚本家との攻防とは

『追憶』ラブロマンスかポリティカルか、シドニー・ポラックと脚本家との攻防とは


 第二次大戦下のニューヨーク。ラジオ局で働く傍ら、ライフワークである反政府活動に励みながらも、充実した日々を過ごしていたケイティ(バーブラ・ストライサンド)は、上司に連れられて訪れた高級レストランで、軍服姿も勇ましいハベル(ロバート・レッドフォード)と再会する。学生時代、秘かに憧れていた相手である。そこから一気に時間が巻き戻り、2人がいかにして出会い、どんなキャンパスライフを過ごし、そして、再会を機に結婚し、別れを決意するまでを、珠玉のメロディと共に綴る『追憶』(73)。今なお映画ファンに愛されている作品だ。


 しかし、これが単なるラブロマンスでないことは明らかである。生き方の違い、価値観の違いが、愛情をも凌駕していく。人生の苦味が甘さよりも強く舌の上に残るのだ。


 苦味と甘味。この相反する2つの要素をどう配分するかは、映画が作られていく過程で常に議論のテーマだった。


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脚本家vs監督のエンドレスな攻防



 この物語は、舞台版『ウエスト・サイド物語』(57)等の劇作家として知られる脚本家、アーサー・ローレンツが、母校のコーネル大学在籍中に出会った学友との想い出がベースになっている。ケイティのモデルである。彼女はアメリカ共産党連盟に所属し、スペイン内戦(1936~39)での人民戦線政府を支援する活動をキャンパス内で展開していた。平和な学園で日々声高に反ファシストを訴え続ける孤独なその姿に感銘を受けたローレンツが、学生時代を回想しつつ筆を取ったのがすべての始まりだ。



 ローレンツは、『ひとりぼっちの青春』(69)の演出力を評価し、シドニー・ポラックを監督に希望していた。しかし、ローレンツはポラックを監督に選んだことを後悔し始める。ケイティを主軸に書いたはずの脚本が、ポラックの意向によりケイティとハベルが同等に描かれる男女間の物語へと、次第に書き換えられていったのだ。


 仲を取り持った製作のレイ・スタークは、彼が所有するアイダホ州サンバレーの別荘に2人を缶詰にして脚本のリライトを指示。しかし、完成した脚本に自分の痕跡がほぼ残されてないことに傷ついたローレンツは、一旦プロジェクトから去ることになる。


 混迷する脚本作りは、その後、ダルトン・トランボ、アルヴィン・サージェント、パディ・チャイエフスキー等、名だたる名脚本家を始め、計11人を総動員して行われるが、そうして完成した脚本をストライサンドとレッドフォードが気に入らず、結果、ボツに。直後、ローレンツが再び呼び戻されることとなる。


 ローレンツ復帰後も、彼とポラックの間では、物語をポリティカルとラブロマンスのどちらに比重を置くかについて議論が続く。最終的にはポラックの案が通った形だが、映画を評価するのは観客である。ここで、改めてストーリーを振り返ってみよう。



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