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ペンギン / キャットウーマン
映画でお馴染みの主な顔ぶれから、スクリーン以外のメディアで個性を発揮させているものまで、バットマンが夜毎戦っているゴッサムの犯罪者たちを、あくまで好みで選んで紹介するシリーズ第二弾。前回もそれぞれのバックグラウンドを背負った個性豊かな悪役たちを紹介したが、そこに共通するのは狂気だった。
・ペンギン
しかし、狂気に満ちたゴッサムにおいて、正気の悪党も少なからず存在する。シルクハットに燕尾服、突き出たお腹に丸い体躯、黒いコウモリ傘にモノクルという紳士的な風貌のオズワルド・コブルポットこと、怪人ペンギンがそのひとりである。ジョーカー同様その背景にはいくつかのパターンがあるようだが、いずれも名門コブルポット家出身の上流階級で、武器を仕込んだコウモリ傘を使い、鳥類を好むというキャラクターだ。ジョーカーやトゥーフェイスは確かに大きな悪役で魅力的だが、ぼくが個人的にヴィランの中で一番好きなのはペンギンである。なによりそのヴィジュアルが素晴らしい。特別な衣装やミュータント的な特徴を一切使わずに表現されたペンギン的なシルエットが最高だ。
ペンギンびいきの入り口はティム・バートン作品としても傑作である『バットマン リターンズ』。名門に生まれるも、クチバシのように尖った鼻と水かきのような手、そして天性の凶暴さから両親に下水道に捨てられてしまった醜い赤ん坊が、閉鎖された動物園に置き去りにされていたペンギンたちや、フリークス・ショーのサーカス団によって育てられ、犯罪者に成長する。ここでのペンギンはまさに怪物そのもの(なぜか口から暗緑色の液体を吐く)で、監督バートンのゴシック趣味とも合致したヴィジュアルは強烈だが、そのイメージの強さがかえって原作における普通の人間でありながらペンギン的な風貌、という本来のシンプルな良さを際立たせたと思う。
同じゴッサムの名家の生まれという点で、オズワルド・コブルポットとブルース・ウェインは対の関係として見ることもできる。名門の出という共通点を持ちながらも両者が全く違う環境で育ったのは、わざわざ言うまでもない。大抵のバージョンではコブルポット家はウェイン家の繁栄の影で没落していったとされるが、オズワルドとブルースはのちにペンギンとバットマンという怪人同士として引き合わされ、奇妙な関係を築くことになる。
・キャットウーマン
バットマンとの奇妙な関係と言えば、時には敵に、時には協力者、そして時には恋人にもなるキャットウーマンも忘れられない。彼女は決していたずらに殺人を犯さない義賊的な泥棒で、はっきりヴィランと定義していいか悩ましいところだが、少なくともバットガールやロビンのような仲間ではないだろう。ペンギンと同様正気を保っている人物で、高い身体能力を持つ盗賊である。
ペンギンと並ぶメイン・ヴィランとして登場する『バットマン リターンズ』では、会社の陰謀を知ったために上司に殺されるも猫の魔力によって蘇り、猫にまつわる言い伝え通り9つの命を持ったやや超人的な人物として描かれ、だいぶ狂気の色が濃いキャラクターとなっている。映画もドラマも含め何人もの女優が演じてきたが、やはりぼくはこのミシェル・ファイファー版がお気に入りである。泥棒というオリジナルの要素は薄いが、死から復活した後、着なくなった革ジャンを使ってキャットウーマンの衣装を作るくだりが良い。そんなミシェル・ファイファーも、今ではマーベルで初代ワスプになっている。