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肉体で表現された狂気は、言葉による表現を超える『CLIMAX クライマックス』ギャスパー・ノエ監督【Director’s Interview Vol.45】

肉体で表現された狂気は、言葉による表現を超える『CLIMAX クライマックス』ギャスパー・ノエ監督【Director’s Interview Vol.45】

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1991年に発表された40分の中編『カルネ』で一大センセーションを巻き起こして以来、『アレックス』(02)『LOVE 3D』(15)など論議を呼ぶ作品を連打し続けてきたギャスパー・ノエ監督。バイオレンスやセックスを容赦ない描写ですくいとり、人間の内面に迫るフランスの異才。そんな彼が放つ新作『CLIMAX クライマックス』は、やはり見る者の心にグイグイと食い込んでくる衝撃作だ。


公演前の最後のリハーサルを終えた若いダンサーたちを襲う、打ち上げ時の惨劇。それはアルコールのせいか、そこに混入されたドラッグのせいか……いずれにしても、映画は人間の狂気に切り込み、その暗部を暴き出す。ノエ監督は、本作で何を描こうとしたのか? 宣伝のために来日した彼に話を訊いた。


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敵が褒めてきたときは気をつけろ



Q:『CLIMAX クライマックス』は強烈な作品でしたが、反響も大きかったのではないでしょうか?


ノエ:前作『LOVE 3D』よりも挑発的ではないと、私は思っている。プレスは自分にとっては敵というべき存在だが、今回はフランスでは意外にも好評だった。「ギャスパーも落ち着いてきた」という評をいただいたよ。まあ、敵が褒めたときは気を付けないといけないものだが(苦笑)。この映画のメッセージについて、よく訊かれるけれど、「ダンスは楽しい、アルコールは怖い」だ、と答えるようにしている。アンチ・アルコールのキャンペーンにも使えると思うよ(笑)。


Q:物語は圧巻のダンス・シーンに始まり、恐ろしい狂宴へと発展しますが、撮影現場はどんな雰囲気だったのでしょう?


ノエ:撮影はとにかく順調だった。今回は順撮りをしたんだ。シノプシスはあったがセリフは何もなかった。その時その時で、出演者たちに即興でセリフを言ってもらった。とにかく現場は楽しい雰囲気だったよ。映画のようにアルコールに酔う人はいなかったし、彼らは全神経を撮影に集中させていた。皆、必死に頑張ってくれたし、自分でもよく撮ったと思える作品だ。




Q:現場をコントロールするために気を配られたことはありますか?


ノエ:撮影現場の前にあるホテルに皆で宿泊して、撮影時にはセットに向かうわけだけれど、この映画は一夜の話だ。夜のシーンを撮影するために午前の時間を使うのは、効率がよくないものだ。夜のシーンは、やはり夜に撮るべきだ。なので、撮影自体は午後3時から準備をして、夜の1、2時まで撮影するようなスケジュールだった。夜中の0時くらいに撮ったシーンは、だいたいどれも出来が良かったよ。俳優たちは皆ほどほどに疲れていて、それが劇中のキャラクターにも反映されている。


Q:完全な順撮りなのですか?


ノエ:ダンサーたちの個別のインタビュー映像だけは、セットに入る3日前に撮ったが、それ以外はエピローグまで、すべて順撮りだ。日本の映画監督は撮影がスピーディだと聞いたことがあるけれど、私はこれを15日で撮ったから、彼らよりも早かったんじゃないかな。『エンター・ザ・ボイド』は日本で撮ったけれど、そのときに早く撮る方法を教わったんだが、その経験が活きた。フランスでは、「15日で撮った」と言うと驚かれる。「どうやって撮ったんだ?」とね。



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