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子どもの想像を映像にしたい。奥山大史監督『僕はイエス様が嫌い』【Director’s Interview Vol.51】

子どもの想像を映像にしたい。奥山大史監督『僕はイエス様が嫌い』【Director’s Interview Vol.51】

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独学で学んだ撮影技術



Q:映画のルックが素晴らしく、ワンカットワンカットが、スチール写真のようにバッチリ決まっていて、どこを切り取っても綺麗だなと思いました。監督が撮影も担当していると知って驚いたのですが、撮影技術はどこで学ばれたのでしょうか。


奥山:ほぼ独学に近いですね。自主映画の撮影に呼んでもらえるようになって、それでいくつか撮影を担当してました。今も映画監督として活躍されている、松本花奈さんや小川紗良さん、城真也さんなど、当時から自主映画界で頑張っている同世代の人と作ることが多かったです。予算的にも時間的にも制約があって当たり前という状況で、少しでもクオリティをあげようと思ってやっていたので、楽しく模索している時期が1〜2年ありましたね。


それを経て、少しづつですが、広告のお仕事なども呼んでもらえることが出て来ました。そこで、自分よりはるかに年上で経験豊富な方が助手について下さることも出てきて、色々なことを教えていただきました。カメラマンが助手に教えてもらうという不思議な構図でしたが、そこで教わったことが、今活きている感じがしますね。映画だけやっていたら、ここまで来るのはなかなか難しかったと思うのですが、広告などの似て非なる世界で撮ってみて、見えて来たものは大きかったですね。




Q:映画全体のトーンがここまでしっかり高められている作品は、自主映画ではそうそう無いと思います。スチール写真などを経験されているのかなと思っていましたが、そうではないんですね。


奥山:フィルムで写真を撮ったりするのは好きでしたけど、それを仕事にしようとは思ったことはないですね。でも、最近のデジタル撮影された映画を見るより、一昔前の相米慎二監督や森田芳光監督の作品の色や質感がすごく好きなので、そういうのを見て、近づけたいっていうのは強くありましたね。

もちろんフィルムで撮れたらいいんですけど、どうしてもそれにかかるコストや、それによって生じる様々な制約を考えると、デジタルで撮影したものをグレーディングでフィルムルックに寄せた方が表現の幅が広がるんだろうなって思いました。


自主映画を撮影していた頃は、どうすればフィルムに寄せられるかって考えていましたね。ただ、デジタルをひたすらフィルムに寄せていっても、どうしても劣る面が出てくるので、フィルムにできなくてデジタルにできることを探りつつ、より良いルックを目指すようになりました。




Q:画角が4:3でスタンダードサイズですが、その意図を教えてください。


奥山:4:3は画が作りやすいっていうのが自分の中に明確にあって、それで使いたかったというのがまずあります。もう一つの理由は時代設定によるものです。


この映画は、自分が小学生だった2003年ごろを時代設定にしています。だからスマホは出さず、電話もその時使われていたものを調べて使ったり、衣装とかもこだわりましたね。脚本も、そういうことを意識しながら書きました。その際のリサーチの一環で、自分が小学生の時の運動会のビデオを見返したんです。当時はまだminiDVが主流なので4:3で撮られているんですよ。映画を観るお客さんには、そんな昔のホームビデオを見返している時のような、懐かしい感覚に浸ってもらえると良いなと思い4:3にしました。


Q:アングルもしっかり決まっていましたが、コンテは描かれたのでしょうか。


奥山:一切描かないですね。ただ、俯瞰図は描きます。撮影場所の地図を描いて、こことここにカメラを置く。っていうのは描いておくんです。でもそれはあくまで自分用です。お芝居やその時の自然光の具合にも影響されてしまうので、現場でフレキシブルに動く意味でも、俯瞰図以外は描いてないですね。




Q:コンテがないと編集も大変そうですね。


奥山:編集は結構時間がかかりましたね。この映画、ワンシーンワンカットがほとんどなんでカット数が極端に少ないんです。それなのに、色々とこねくり回しているうちに、2ヶ月ぐらいかかりました。


Q:結構かかりましたね。


奥山:はい。撮影は7日間だったのですが、編集はすごくかかりましたね。


Q:編集もお一人で?それともエディターの方と一緒に?


奥山:編集は自分でやりました。ポスプロ作業で他の方にやっていただいたのは、MA(音の調整)とイエス様の合成です。また、海外映画祭に出すために、英語字幕をチャド・マレーンさんに作っていただきました。


Q:イエス様の合成もかなり自然で馴染んでましたね。


奥山:そうですね。合成作業にはすごく時間をかけてもらいました。イエス様の周りに出てくるキラキラな粉とか靄を、VFXアーティストとして入っていただいた守屋匠さんにこだわって作っていただき、さらに、そこから馴染ませる作業をIMAGICAにやっていただきました。



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