きっかけはグサヴィエ・ドラン
Q:奥山さんが映画を撮ろうと思ったきっかけを教えてください。
奥山:単純に映画が好きだからなので、「これだ!」と思い当たるきっかけが特に無くて。だから、インタビューでそういった質問をしていただく度に、毎回違う答えをしています。今回も「あの時だったのかもな」と思える体験の1つを言うとすれば、大学生の時に新文芸坐でグザヴィエ・ドラン特集をオールナイトで観たことがあったんです。当時ドランは25~6歳くらいだったと思いますが、自分と同世代の人が、自分と同年齢の時に撮ったものを観て、すごく悔しかったんです。なぜ日本にはドランみたいな人がいないんだろう。ましてや日本って、ドランがいるカナダよりは映画ビジネスが盛んなはずです。なのに、なぜ?と思いましたね。
実は今、フランスで本作を劇場公開してもらっていて、「ドランの影響を感じる」っていう感想がフランスのお客さんから届いたんです。その感想を聞いて、オールナイトを見たときの感情が久々に蘇りました。
Q:ドランの映画では、画角が4:3のものもありますね。
奥山:そうですね。『わたしはロランス』とか素晴らしいですよね。テーマがすごくはっきりしているのもいいところですけど、構図の作り方や光の入り方に美学を感じます。
Q:本作は海外でも評価され、ブルーレイ/DVDも出ることになりました。今後はどのように活動されていかれるのでしょうか。
奥山:なかなかこの規模の映画でのブルーレイ/DVD化って難しくて、配信の方がむしろハードルが低くなってきているんです。でも、形として残したいっていうのが強くあったので、実現して嬉しく思っています。
せっかくなら作った映画をなるべくいろんな人に見てもらいたいんです。日本だけで無く海外でも上映をしてもりましたが、やはり映画館だけでの公開だと見れる人が限られてしまうので、二次利用でさらに広げていきたいという思いが最初からありました。DVDにする際も、聴覚障害の方や高齢者の方にも楽しんでもらえるように、バリアフリー字幕をつけました。また、以前に大竹しのぶさんに出演していただいた短編も映像特典に入れさせてもらいました。今後は、配信やテレビでの放映なども視野に入れて、とにかく多くの人に見てもらえるようにしていきたいですね。
今後については、まだ一作しか作っていないので、これを超える思いで毎回作っていかなくてはと思っています。
Q:具体的に何か進行してるものはあるのでしょうか?
奥山:少しずつ企画は進めていまして、今年中か、来年初めくらいには撮れたらいいなと思っています。次は商業デビューとして臨みたいですね。
Q:普通の映画館で上映されていたので商業映画だと思いがちですが、始まりはあくまで自主映画なんですよね。
奥山:はい。映画祭で受賞してから、劇場で流せることになったので、それは良かったですね。とにかくTOHOシネマズで上映したかったんですよ。普段インディーズ映画に触れない人たちにも触れて欲しかったんです。
配給を引き受けてくれる会社を探していた時、「TOHOシネマズでかけたいです」って言うとほとんどの映画会社の方は苦笑されるんですが、でも気づいたら、TOHOシネマズ日比谷やシャンテで1ヶ月半ぐらい流していただきました。初日舞台挨拶の日、大作が並ぶTOHOシネマズのラインナップの中に『僕はイエス様が嫌い』が入っているのを見て、自分でもなんでこの作品が入ってるんだろうって思ってしまったのですが、そういうところで流れたからこそ、普段インディーズ映画を観ない人だったり、宗教にはなかなか触れない人たちにも観てもらうことが出来ました。そういった意味で、「多くの人に観てもらいたい」という気持ちは今後も大切にしたいなと思いますね。
監督:奥山大史
1996年東京生まれ。初監督長編映画「僕はイエス様が嫌い」が、第66回サンセバスチャン国際映画祭の最優秀新人監督賞を史上最年少で受賞。学生時代に監督した短編映画「Tokyo 2001/10/21 22:32 ~ 22:41」(主演:大竹しのぶ)は、第23回釜山国際映画祭に正式出品された。
奥山が監督・撮影を務めたAI美空ひばりのメモリアル映像がYouTubeで公開中。
取材・文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
『僕はイエス様が嫌い』 Blu-ray & DVD 絶賛発売中!
映像特典としてメイキングスライドやコメント予告、さらには大竹しのぶが主演を務めた短編『Tokyo 2001/10/21 22:32~22:41』を特別収録。
詳しくはコチラから。
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