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不思議な緑色の物体フラバー
ロビン・ウィリアムズ主演の『フラバー』と言えば、タイトルロールである不思議な緑色の物体が、延々と飛び跳ねたり踊ったりする映像が印象的だが、登場するロボットたちも造形がおもしろくて魅力的だ。最近改めて見返してみたら、ストーリー的にもフラバーをしのぐほどの存在感を放っているように感じられた。
ウィリアムズ扮するフィリップ・ブレイナード教授は大学で化学を教えながら、新しいエネルギーの研究に取り組んでいるが、勤める大学は経営難に陥っており、学長でフィアンセであるサラにはこれまで結婚式を2回すっぽかしていることで(!?)愛想を尽かされかけていた。しかし全ては新エネルギーの発明で好転するはず。その一心で作業に没頭するフィリップだったが、彼が結婚式の予定を忘れてしまうのも、この没頭癖が原因だった。最後のチャンスだった3回目の結婚式当日、とうとう彼は膨大な弾力と運動エネルギーを備えた流動的な緑色の物体を作り出す。衝撃を加えれば延々と跳ね回り続けるそれを、フィリップは「フライング・ラバー(空飛ぶゴム)」、略して「フラバー」と命名して新発明に有頂天になるが、案の定結婚式を忘れてサラを完全に怒らせてしまう。さらにその隙をついて恋敵ウィルソンが彼女に近づき、大学にも危機が迫る。フィリップはフラバーを使って全てを解決しようとする……。
ライム味のゼリーのように透き通った緑色のフラバーの姿や挙動は、アニメーションとしてもちろんおもしろい。初めてフィリップがフラバーに触れるシーンでは、本当にこの不思議な物体を手で触っているかのようなリアルさが伝わってくる。しかし、当時まだまだ映像としては異物さが際立っていた頃なのだが、そこはロビン・ウィリアムズの想像力や演技によって補われているのだと思う。フラバーのハイライトはなんと言ってもフィリップが留守の間に家の中で音楽に合わせて踊り狂うシーンで、無数に分裂して伸び伸びと跳ね回るフラバーたちとダニー・エルフマンによるマンボでとても盛り上がる。何度もこのくだりだけ巻き戻して観た記憶がある。実はポスターなどのメインヴィジュアルで姿を見せる丸い体躯の人型をしたフラバーはこのシーンくらいにしか現れず、キャラクターとしてのほとんど唯一の見せ場とも言える。
フラバー自体の描写のほかにも、クリームや液体に加工されたフラバーによって大学の弱小バスケチームが嘘のような大ジャンプで逆転劇を繰り広げたり、フラバーを積み込んでフォード・サンダーバードを空飛ぶ車に作り替えて夜空を飛び回ったりと、とにかくその強力な弾性を表現する楽しい映像が続く。派手でわかりやすく夢のある描写だが、しかし最初に書いたように改めてわかったのは、フラバーのほかにも魅力的な要素があることだ。フィリップの家で彼を手伝うロボットたちである。