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『フラバー』はロボットもおもしろい【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.40】

『フラバー』はロボットもおもしろい【川原瑞丸のCINEMONOLOGUE Vol.40】

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夢のある発明が魅力





 サラに愛想を尽かされて意気消沈したフィリップの姿を見たウィーボは、彼の幸福ために自分の恋を諦める。彼女は教授がサラへの想いを語る様子を密かに録画し、それをサラに見せるのだが、誰もいないところで自然と心の内を語るフィリップに胸を打たれたサラは彼を許し、ウィーボはふたりの仲を修復することに成功するのだった。


 やがてフィリップの発明(フラバーの方だ)は大学の出資者である富豪ホーニッカーによって狙われ、彼が差し向けた手下(その名もスミスとウェッソン)によって留守中の家が荒らされる。機転を利かせたウィーボは反撃に出るものの、最後は野球バットで破壊され、フラバーも奪われてしまう。家に戻ったフィリップは荒らされた研究室の床にウィーボの残骸を発見するが、モニターに表示された最後のメッセージを手がかりにコンピューターの中を探ると、そこにはウィーボのバックアップデータとホログラムの姿を通して語られるメッセージが遺されていた。ウィーボから愛の告白を聴き、偶然出来上がったはずの彼女が自分の設計図を保存していただけでなく、自分で修正も加えていたことを知ったフィリップは、決意を新たにフラバーを取り戻すため、サラとともにホーニッカー邸に向かう……。


 例によってフラバーの弾力を用いた飛び跳ね格闘で、悪党たちをこらしめたフィリップとサラは、その発明によって得た資金で大学を救い、ついに4回目の結婚式を挙げる。だがまたしても教会にフィリップの姿はなく、代わりにそこには真っ赤なボディの新しいロボットがいた。ウィーボの遺した「娘」であるウィーベットのワイドなモニターには、自宅の研究室で作業中のフィリップが映し出され、新郎新婦はモニターごしに誓いを交わして夫婦となるのだった。心置きなく研究に没頭しつつ結婚式も挙げるというフィリップの願いが叶ったわけだが、それを実現させたのは生まれ変わったウィーボとも言うべきウィーベット。『ハン・ソロ』では破壊されてしまったL3-37が、その頭脳を宇宙船ミレニアム・ファルコン号のコンピューターに組み込まれ、実は後の冒険の生き証人になっていたことが判明するが、ウィーボもまた形を変えてフィリップとサラのそばに寄り添い続ける。


 もはやフラバーのことを忘れてしまいそうになるほど、ロボットにお話を持っていかれるが、もちろん緑の物体は物語の原動力。その弾性と運動エネルギーがあってこその展開だ。そしてフラバーをはじめロボットや空飛ぶ車(これも動力はフラバーだが別個の存在感がある)など夢のある発明品や、それらを作った発明家のキャラクターが、子ども心に響いたのだと思う。機械仕掛けの備わった家や地下の研究室、お手伝いのロボットたちとくれば、楽しいに決まっている。全自動で朝食が用意されるオープニングからして好きだった(今思えばここはダニー・エルフマンの音楽ということもあり『ピーウィーの大冒険』の冒頭に似ている)。ラストの結婚式の最中でも、二種類の液体を混ぜることで大爆発を起こすという、超ベタな発明家ぶりを見せてくれるフィリップだが、そういうわかりやすいところがまたいい。



イラスト・文:川原瑞丸

1991年生まれ。イラストレーター。雑誌や書籍の装画・挿絵のほかに映画や本のイラストコラムなど。「SPUR」(集英社)で新作映画レビュー連載中。 

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