プロデューサー主導のハリウッド
Q:『MEMORIES』の「最臭兵器」はアクションシーンが多かったと思います。もし、マーベルのようなハリウッドアクション大作で音楽制作の依頼があった場合はどうされますか。
三宅:もちろん依頼が来たらやってみたいですね。ただ、今は作曲家もファクトリー化しているんです。例えばよくお名前を見るH.Zさんなんて、あれだけの本数を全て自分の手で書いてるかどうかは極めて疑問で、若手の作曲家が書いて彼が監修するっていう形をとっていますよね。ハリウッドってコンペティションが非常に激しいので、そういう人達と競合して残っていくには、そもそもの知名度が必要なんです。音楽家の決定権が監督だけではないんですよ。年々プロデューサー、つまり出資者の力の方が強くなっているのを感じます。
ハリウッドでは、監督が推してくれてもプロデューサーからNGが出て覆る経験が、過去に何度かありましたね。オリバー・ストーンとの仕事もそんな感じでした。
Q:オリバー・ストーンなんて、とても作家性の強い監督なので、彼の意見なんて通りそうですけどね。
三宅:ハリウッドは予算があるので、二人の作曲家を雇い、それぞれのスコアを録って比べたりたりもするんです。それで、監督は内容で推してくれても、プロデューサーは知名度で決めてしまったりする。なので、実際にハリウッドで暮らしてそれなりの人脈を築かないと、仕事をするのはなかなか難しいですね。政治的な部分もあるんだなという風に理解しています。
Q:そういう意味では今回のプロデューサーは、ちゃんと内容を重視する方だったんですね。
三宅:そうですね。今回のプロデューサーは単にお金を出したというよりも、作品を重視して作っていきたいタイプのプロデューサーだと思います。アラン・アタルという有名な方です。
Q:今後仕事をしてみたい映画監督などがいれば教えてください。
三宅:亡くなってしまいましたが、スタンリー・キューブリック、フェデリコ・フェリーニ、セルゲイ・パラジャーノフとかは好きですね。生きてる人だと、デヴィッド・リンチやレオン・カラックス、エミール・クストリッツァとかペドロ・アルモドバル。デヴィッド・フィンチャーやターセムなんかもいいですよね。お仕事してみたいです。
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音楽:三宅純
アーティスト、作曲家、編曲家、演奏家。バークリー音楽大学に学び、ジャズ・トランぺッターとして活動開始。アーティスト活動の傍ら、作曲家として頭角を現し、CM、映画、アニメ、ドキュメンタリー、コンテンポラリーダンス等多くの作品に楽曲を提供。05年よりパリに拠点を設け、近年のソロ・アルバムは、ヨーロッパのメディアで「音楽批評家大賞」「年間ベストアルバム賞」などを連続受賞。映画音楽は世界的評価を受け、米アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞にノミネートされた『Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち』(12)をはじめ、『嘘はフィクサーのはじまり』(16)、『人間失格 太宰治と3人の女たち』(19)など。2016年リオ五輪閉会式では椎名林檎からの依頼に応え「君が代」のアレンジを担当し、世界を驚愕させた。
取材・文:香田史生
CINEMOREの編集部員兼ライター。映画のめざめは『グーニーズ』と『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』。最近のお気に入りは、黒澤明や小津安二郎など4Kデジタルリマスターのクラシック作品。
『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』
2020年1月24日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、渋谷シネクイント、新宿ピカデリー他
絶賛公開中
配給:ギャガ
(c) (2019) TRÉSOR FILMS – FRANCE 2 CINÉMA - MARS FILMS- WILD BUNCH – LES PRODUCTIONS DU TRÉSOR - ARTÉMIS PRODUCTIONS