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【ミニシアター再訪】第24回 渋谷系の流行、ミニシアターの熱い夏・・・その1 渋谷のカリスマ、シネマライズのはじまり

【ミニシアター再訪】第24回 渋谷系の流行、ミニシアターの熱い夏・・・その1 渋谷のカリスマ、シネマライズのはじまり


 渋谷はミニシアターの街だったが、この映画館がなかったら、街の印象も違っていたかもしれない……。そんな風に思わせる個性を持っていたのが、シネマライズという劇場である。


 最先端の流行の発信地で、先見の明があった。その結果、『レザボア・ドッグス』のクエンティン・タランティーノ、『ドラッグストア・カウボーイ』のガス・ヴァン・サント、『ヴァージン・スーサイズ』のソフィア・コッポラ、『トレインスポッティング』のダニー・ボイルなど後に有名になった監督たちをいち早く紹介し、渋谷にいる若い観客たちの心をつかんだ。熱狂的な支持者も多く、ここに通っていて後にクリエイターになった人も多い、と聞く。


 まさに渋谷のカリスマと呼ぶにふさわしかったのが、シネマライズである。


 しかし、2010年に3館のうちのふたつが閉館となり、16年には残りのひとつも終わりを迎えた(結局、2館はライブハウスとなった)。


 この記事を書いた時、まだ1館だけは残っていて、代表者と専務に代表作を語ってもらった(インタビュー記事は次回登場)。


 まずは“憧れの劇場”といわれたシネマライズの歩みを振り返ってみた。


※以下記事は、2013年~2014年の間、芸術新聞社運営のWEBサイトにて連載されていた記事です。今回、大森さわこ様と株式会社芸術新聞社様の許可をいただき転載させていただいております。


Index


憧れの劇場



 渋谷は個性的なミニシアターが多いことで知られてきた街だ。 


 この土地の歴史的な資料を集めた「白根記念渋谷区郷土博物館・文学館」には渋谷の歴史をたどった壁年表があり、そこに渋谷地区の名物となった事柄や風俗があげられているが、80年代後半の年表には<ホコ天(歩行者天国)>、<渋カジ>などと並んで、<ミニシアター>の文字もある。 


 この時代、渋谷に登場したミニシアターの中で、とりわけ都市の先鋭性を象徴する劇場として注目されたのが、シネマライズだ。40代以降のマスコミ関係者と話をすると、若かった頃の“憧れの劇場”として名前をあげる人も多い。 


 場所は公園通りの商業施設、PARCOの横にあり、スペイン坂にも面していた。スペイン坂の劇場の壁に『ドラッグストア・カウボーイ』(89)や『トレインスポッティング』(96)といった上映作品のポスターが貼られているのを見て胸をときめかせた、と語る宣伝部の女性もいる。 


 『ドラッグストア・カウボーイ』のように人気作品の場合、貼られたポスターが盗まれたことも、たびたびあったようだ。また、先日、あるDVDショップを訪ねたら、この映画のパッケージの横にこんなポップが立てられていた。 


 「初めて学校をサボって、渋谷のパルコの前にある映画館に行った。見たのは『ドラッグストア・カウボーイ』。パンフレットを買うお金なんてなかったけれど、あのドキドキ感は今でも忘れられない。罪悪感と映画の内容が入り混じり、カッコつけたい盛りの中学生の僕は、この映画の虜になった。思いっきり背伸びしていた、あの日の僕」 


 ただのイメージ・コピーなのか、実体験を回想した文章なのかよく分からない。ただ、初公開から24年が過ぎた後も、“パルコの前にある映画館”にかけられたことを覚えているわけだから、書き手の思いが投影された文章であることは間違いない。 当時のティーンにとって忘れがたい映画体験ができる場所でもあったのだろう。 


 『ドラッグストア・カウボーイ』のガス・ヴァン・サントや『トレインスポッティング』のダニー・ボイルのように、今も第一線で活躍する監督たちの初期の代表作を上映していた劇場だった。さらに『神経衰弱ぎりぎりの女たち』(87)のペドロ・アルモドヴァル、『ポンヌフの恋人』(91)のレオス・カラックス、『ガンモ』(97)のハーモニー・コリン、『レザボア・ドッグス』(91)のクエンティン・タランティーノ、『ヨーロッパ』(91)のラース・フォン・トリアー、『ヴァージン・スーサイズ』(99)のソフィア・コッポラ等、シネマライズは多くの新鋭監督たちをどこよりも早く発見している。 


 映像、音楽、ファッションのセンスがよくて、挑発的なアート感覚を取り入れた作品を上映し、ニューヨークやロンドンのとがった劇場のテイストを東京でも楽しむことができる。 シネマライズはそんな場所に思えたものだ。



◉「ストリート」という言葉が似合う街、渋谷。シネマライズの大ヒット作『ドラッグストア・カウボーイ』にもそんなテイストが感じられる。ガス・ヴァン・サント監督の日本初登場作で、若きマット・ディロンが主演。ポスターは大人気となり、たびたび盗まれたという。




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