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【CINEMORE ACADEMY Vol.2】脚本編 映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』の作り方

【CINEMORE ACADEMY Vol.2】脚本編 映画『宇宙でいちばんあかるい屋根』の作り方

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映画は、どうやって「作られる」のだろうか? 


映画の成り立ちを知れば、作品鑑賞はもっと面白くなる――。そこでCINEMOREでは、「CINEMORE ACADEMY」と題し、映画の作り方をクリエイターに学ぶプロジェクトを“開講”、映画製作の“リアル”をお届けする。


今回、講師に迎えるのは、『新聞記者』(19)で日本映画界に革命をもたらした俊英・藤井道人監督。今秋公開予定の最新作『宇宙でいちばんあかるい屋根』を題材に、今回の映画をどのように作ったのか、詳しく伺っていく。


第1回目の「企画編」を受けて、今回は「脚本編」。『スワロウテイル』(96)や『キル・ビル』(04)などの製作も担当した前田浩子プロデューサーも、前回に引き続き同席する。


「完成まで4、5年かかるのは普通」という脚本づくりの内実を、仕上がるまでのプロセスを紐解きつつ、貴重な裏話を交えて掘り下げていく。


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脚本の礎となる「プロット」とは?



今回の『宇宙でいちばんあかるい屋根』は、野中ともその人気小説「宇宙でいちばんあかるい屋根」(光文社文庫刊)を原作にしている。脚本製作においては、藤井監督と前田Prが二人三脚で進めていく体制をとったようだ。


Q:前回のお話で、前田さんが16年以上前に『宇宙でいちばんあかるい屋根』の原作に出会って、長い時間をかけて映画化権を獲得した、というお話を伺いました。その後、監督が藤井さんに決まってから、さらに3、4年かけて脚本を作られていますよね。結構長いのかなと感じたのですが、脚本づくりは通常、どれくらいの時間をかけるものなのでしょう?


藤井:そうですね、ケースバイケースだと思いますが、僕からすると4年ぐらいかけるっていうのはよくあることです。


前田:私もそうです。4、5年はわりと普通にあります。


Q:そうなんですね! いきなり驚きです(笑)。


藤井:『宇宙でいちばんあかるい屋根』は、僕の記憶では4年前の段階だと、脚本家の選定をやっていたり、別の脚本家さんがちょっと書いたりしていました。ただ、最終的には僕が脚本を書くことになって、3年前にプロットに着手しました。


2年前に一度クランクインを試みましょうという時期もあったんですが、諸事情でクランクインが2019年になったので、脚本をよりブラッシュアップしました。365日ずっとやっていたというよりは、(前田)浩子さんも僕も別の作品をやりながら、そこで得たものや、感じたことを脚本に戻す作業に充てていました。脚本づくりには原作者の野中さんも入ってくれて、みんなでグループディスカッションしながら、じっくり詰めていけたのかなと思います。


ただ、クランクイン3ヶ月前に「やっぱり今撮りたいものはこうだ!」って感じて、大きく変更しましたね。主演に清原果耶さんが決まったり、キャストがそろっていく中でイメージがより具体的にわいてきて、最終的な調整をしていきました。



『宇宙でいちばんあかるい屋根』実際の脚本


Q:プロットのお話が出ましたが、脚本との違いは?


藤井:基本的にはあらすじ、筋書きを整理するためにプロットがあって、僕の中での脚本は、設計図としての要素がすごく大きいですね。プロットの形式はかなり自由で、小説のように一人称で書く人もいるし、出来事を順々に追っていく人もいます。


オリジナル(原作が存在しない)の時には、しっかり書き込むことも多いです。僕とプロデュースチームと製作委員会の皆さんが整理できるためには、やはりプロットが必要で、プロットが整ってから脚本を書くというスタイルです。プロットは、脚本を書く前の下準備としての要素が大きいと思います。


ちなみに僕は、プロットをほとんど書かないスタイルで今はやっているんですが、『宇宙でいちばんあかるい屋根』の場合は書きました。原作モノの映画がすごく久しぶりだったので、どの要素を残してどの要素を落とすかの整理のためにも必要でした。


『宇宙でいちばんあかるい屋根』のプロットは、「ロングプロット」と呼ばれる15枚ぐらいのものを何回か浩子さんと一緒に作って、っていう感じにしましたね。


Q:先ほど、脚本づくりは4、5年が普通と伺いましたが、プロットづくりはどれくらいかかるものなんでしょう。


藤井:本当に様々で、プロットを1年書かされてポシャったこともありますし(苦笑)。『宇宙でいちばんあかるい屋根』に関しては、半年ぐらいプロット作業をした覚えがありますね。


半年間ずっと書き続けてるっていうよりは、僕と浩子さんで作ったプロットを、一度関係者の方々に展開して意見をもらったりと、そういった中で時間が少しずつ伸びていった形です。


Q:今回は藤井監督が脚本も手がけられていますが、脚本家を別途立てる場合は、プロット自体はどなたが作られるのでしょう。


藤井:脚本家が作ることが多いと思います。


Q:脚本家を雇う時など、「脚本料」が発生するかと思いますが、大体の相場が存在するものなのでしょうか。


前田:監督にしても脚本にしても、まずは総予算がベースになります。「総事業費」と言うんですが、製作費や宣伝費に合わせて、監督料とか脚本料は決まってきます。総予算が小さければ金額もそれに伴う形になるので、明確な相場はないと思いますが、テレビの脚本家はあるようです。ランク付けみたいなものがあると聞きました。


昔、私がテレビの仕事をやっていたときに、「テレビドラマは脚本家とプロデューサーのもので、映画は映画監督のものだ」と言われましたね。テレビドラマって脚本家の力が圧倒的なので、だからランク付けも自ずとできているのかなと思いました。もちろん映画でも「ある一定金額以下ではやりません」と言う大御所の脚本家はいるかもしれませんが、基本的に私が今までやってきた作品は、総予算をベースに検討するという形です。


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